image060710.jpg 先月15日に自殺対策基本法が成立しました。自殺の防止はもちろんのこと、自殺してしまった人の遺族へのケアやだれもが生き甲斐を持って暮らせる社会の実現を目的とし、年内に施行されることになっています。
この法律のいちばんの特徴は、自殺を「社会の問題」と位置づけたことです。今まで自殺は「当人が弱いから」など「個人の問題」とされてきましたが、「自殺の背景には様々な社会的要因がある」(基本理念)として、社会的な取り組みを行うことを明言したのです。

ところで先日、「過酷な業務からうつ病を発症し、働けなくけなくなったのに解雇されたのはおかしい」と会社を訴えている重光由美さん(本人の希望により本名にしています)とお会いしました。

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image060703.jpg 今の教育基本法に規定されているとおり、教育とは人格の完成(精神的にも肉体的にも調和の取れた創造的な生き方のできる人間)を目指すものです。
「人間教育」を目的とした教育基本法の理念は、子どもの全人的な発達を保障するためにつくられた子どもの権利条約にも通じます。

ところが教育基本法「改正」案は違います。すべての子どもの人間としての成長発達を目指す人間教育ではなく、「国に役立つ人材育成」、すなわち国策教育を目指すものです。
平たく言えば、子どもたちは、ときの政府に都合のよい価値観や道徳を教え込まれる一方、国の発展に役立つエリートだけが優遇される教育へと変わります。ますますエリートへの階段は狭き門になるばかりです。

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中1の頃は母親に反抗したこともあったけれど、中3になってからの母子関係は悪くなかったとの報道も気になります。
思春期の反抗は、おとなになるために必要なものです。そうやって親や社会の価値を壊し、自分らしさを確立していきます。おとな側からみれば許し難い反乱である反抗も、子どもにとっては成長のステップです。

何を言っても聞こうとしない両親、怒っても、暴れても、自分の気持ちに気づこうとせず、力で押さえ込もうとする両親に反抗することさえ「諦め」たとき、長男の心にはどんな思いが渦巻いていたのでしょうか。

image060627.jpg 児童虐待がクローズアップされるなかで、虐待(不適切な養育)を受けた子どものトラウマや虐待の世代間連鎖などの研究が進み、アタッチメント(愛着)という概念が再び注目されています。

健全なアタッチメントが形成されることにより、子どもは「自分は愛され、保護されている」と感じ「外界は安全なもの」ととらえることができます。こうした健全なアタッチメントの形成には、いつでも自分に目を配り、自分の気持ちに寄り添ってくれ、自分の欲求に応えてくれる養育者の存在が不可欠です。

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image060622.jpg 会議に集まった子どもたちは、国も文化も、置かれた状況も違います。表面上は豊かで恵まれた先進国と呼ばれる国の子どももいれば、戦争や貧困にあえぐ国の子どももいます。
けれども子どもたちは、みんなJ・Swigartの指摘と同じことを訴えたのです。

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ここに世界153カ国から集まった404名の子どもたちがおとなの世界に向けて出した「A World Fit for Us(私たちにふさわしい世界)」という宣言があります。2000年5月に開かれた「国連子ども特別総会」で、子どもだけの会議を開いて考え、発表したものです。

image060616.jpg おとなは、自分たちの都合に合わせて子どもが振る舞ってくれないと「今時の子どもは・・・」と、子どもの側に問題があるかのように言います。子どもが何を感じているのかを聴こうともせず、自分たちの都合のいいように子どもをつくり変えようとするおとなもいます。

しかし、アメリカの心理臨床家J・Swigartは言います。

「子どもは、私たち自身や私たちの生活、自分たちが適応しなければならない社会にどこか問題があるとき、その行動を通して教えてくれます。・・・私たちの行動が真に破壊的になると、子ども達はギョッとするような悲劇的なやり方で警告してくれます。

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image060612.jpg 人間は関係性のなかで生きています。社会から影響を受けずに生きている人など存在しません。
「ひきこもり」という、一見、社会と隔絶しているかに見える人たちでさえ、日本社会の持つ歪みーー競争、効率化、親や社会の期待などーーと無関係ではありません。「社会の問題」を見ることなしに「個人の心の問題」を語ることなどできないのです。

すべてを「個人の心の問題」と片づけてしまうことは簡単です。けれどもそれでは根本的な解決にはなりません。

iimage060608.jpg 3万2552人。何の数字だと思いますか? 実はこの6月に警察庁が発表した自殺者数です。日本の自殺者数は1998年から8年連続で3万人を超えています。

自殺者数の推移と完全失業率の推移がほぼ同じ動きを見せることはよく指摘されていますが、日本は第12回世界精神医学会(2002年)の推計で実質自殺率世界第1位と言われた国でもあります。
「格差社会」などと言われて久しくなりますが、日本は世界的にみればまだまだ裕福な国です。それにも関わらず、なぜ、こんなにも幸せになれない人が多いのでしょうか?

■木附千晶(きづきちあき)

 IFF・CIAP相談室セラピスト。

 ジュネーブ(スイス)に本部を置く子どもの権利のための国際NGO・DCI(Defence for Children International)日本支部運営委員、機関誌『子どもの権利モニター』編集長、「DCI子どもの権利オンブズマン」委員。

 一橋大学、東京女子医科大学等で授業に招かれて客員講義を行う。
 ジャーナリストとして活動するなかで、子どもをめぐる問題に興味を持ち、AIU/CSPP修士日本プログラムに入学。
 現在は社会・心理学視点を持った臨床・執筆活動を行なっている。

 「オウムの子どもたちの一時保護を検証する」で第12回『週刊金曜日ルポルタージュ大賞』入選。著書に『「こどもの権利条約」絵辞典』(PHP)、『お笑い裁判傍聴記』(自由国民社)ほか。編集を手がけた本に「子どもが語る施設の暮らし」「子どもが語る施設の暮らし2」(明石書店)などがある。