私が学生だった頃は、女友達とふたりだけで、北アフリカや中東をバックパックを担いだ貧乏旅行もできました。スリや置き引き、突然抱きつかれるなどの危険にはたびたびあいましたが、総じて人々は親切で、命の危険を感じたことなどほとんどありませんでした。
今やどうでしょう。海外旅行、とくにアフリカや中東を女性だけの少人数で旅するなんてとても怖くてできません。
時間がたっぷりあった学生時代、なけなしのお金で世界を見ることは私の視野を広げ、今の仕事にとっても役立っています。でも、今の学生はそういう経験をする機会がうんと減ってしまったのではないでしょうか。
経済戦争も過酷に
兵器を使った戦争だけではありません。
経済戦争も過酷さを増しています。「持てる国」と「持てない国」、「持てない人」と「持てる人」の格差はどんどん広がるばかりです。
格差や貧困は、犯罪や暴力を招きます。競争は「他者を思いやり、つながる」という最も人間らしい特徴を削ぎ落としていきます。
だから平気であれだけの犠牲を生んだ原発事故を教訓にすることもなく、平気であちこちの原発再稼働などできるのです。
収益が過去最高を記録した大企業が賃金に還元することなく内部留保に回すのも当然です。
こんな社会では、青息吐息の中小企業は生き延びるためにコストダウンに必死にならざるを得ません。
廃棄処分になるはずだったカレーハウスCoCo壱番屋の食材が不正転売された事件や、安いツアー企画で人を集めるために運転手に無理を強いるバス業界の問題が指摘されたことは記憶に新しいはずです。
真の幸せを得るためには
何でもかんでもポジティブに考えることは、その一瞬を乗り切るためには便利です。でも「それが本当にいいことか」を問うことなく、「いったい何を招くのか」と立ち止まることなく、進んだツケは必ず私たちに返ってきます。
真の幸せを得るためには、負の事実にきちんと目を向けることが必要なのです。