「森発言」は個人のジェンダー差別問題なのか(1)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に前の五輪担当相だった橋本聖子氏が就任しました。
 橋本氏自身がオリンピックでも活躍したアスリートであること、そして、女性であることなどから、就任を歓迎する声も高く、いわゆる「森発言」問題も、これで幕引きという雰囲気になっています。

森氏辞任で一件落着?

 ことの発端は、2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で当時会長だった森善朗氏が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」とか「組織委にも女性はいるが、わきまえている」などと発言したことでした。

 森氏は、「不適切な表現だった」と謝罪し、発言を撤回したが国内外からの批判は収まらず。女性の人権擁護団体を筆頭に、「オリンピックの男女平等の精神から大きく外れる」と、スポンサーやアスリートらも怒りのコメントを発表。聖火ランナーやボランティアが辞退するという事態にもなりました。

 こうした批判の声は、最もだし、私もまったく同感です。しかし、一方で、「森氏だけが批判され、辞任すれば一件落着なのか?」という疑問もあります。

新型コロナウイルス不安

 国は、あくまでも「要請や自粛」を求めているだけですから、もし感染したら「ちゃんと自粛しないからですよ」と感染した人や店に責任を押しつけられます。逆に休業して経済困窮すれば、「あなたの意思で休んだんでしょう」と言い逃れればすむのです。
 
 こうして考えると、一見、緩やかに感じる二度目の緊急事態宣言は、国民にとって極めて厳しい内容です。

「自助、共助、公助」を理念に掲げ、「まずは自分でできることは自分でやってみる。そして、地域や家族で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットで守る」と総裁として決意表明した菅義偉首相らしい、と言わざるを得ません。

「経済再生担当大臣がコロナ対策」の謎

GOTOトラベル

 個人の痛みは「自助」に任せ、コロナ対策の責任を放棄した政府(菅首相)。そんな政府が関心を寄せるのは、経済利益だけのように感じます。

 オリンピック開催に固執し、「GO TO トラベル(やEAT)」の再開にも未練を残す菅政権。「給付金を出しても貯金が増えるだけ」と再給付を拒む麻生太郎財務相(『東京新聞』21年1月26日)を政権の懐に抱え、「コロナ対策」を錦の御旗に急ピッチでIT関連事業を進めています。

 2021年度予算の概算要求では、デジタル関連が約1兆円に迫る勢いです。そこには、菅首相肝いりのデジタル庁創設の布石となる「IT調達の一元化」や、マイナンバーカードの普及に関連した政策も目立つと言います(『日経XTECH』2020年12月7日https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/cpbook/18/00064/00003/ )。

 そもそも新型コロナ対策担当大臣を経済再生担当大臣が兼ねていること自体が、実にへんてこな話と感じるのは私だけなのでしょうか。

国民が望むコロナ対策は?

 この国のコロナ対策は、私たち国民が望んでいるものと合致しているでしょうか。

 少なくとも、多くの国民が望んでいるのは、安く外食ができること、安く旅行に行けることなどではないはずです。家にこもり、ひたすらパソコンとにらめっこする働き方や、課題におわれるだけの勉強などでもないはずです。

“見せしめ”が同調圧力を生む

自粛

 改正新型コロナ対策特措法が施行されれば、ますます政府の力は強まっていきます。「コロナ対策の一環」だと言われれば反論しがたい空気がつくられていきます。

 1月17日に行われた大学入学共通テストで受験生が、監督者からマスクで鼻まで覆うように6回にわたり注意を受けても、指示に従わなかったとして不正行為と見なされた事件がありました。

 こうしたニュースが“見せしめ”のように使われ、「コロナだから仕方が無い」という諦めのなかで、さらなる同調圧力を生まないことを心から望みます。

時短営業中

 感染したら、だれだって休みたいと思います。休んでも生活が回り、経済的に保障されるなら、ほとんどの人が入院や休業を選ぶはずです。 よほどのことがなければ、入院拒否などしたくはないでしょう

 しかし、経済的な理由や子育てや介護など生活上の理由から、休業や入院が難しい人は少なくないはずです。

 それを法を改正して「罰する」というのですから、驚きです。

緊急事態宣言

 新年早々、2度目となる緊急事態宣言が2月7日までの期間、首都圏の1都3県に発令されました。しかしその後も、収束にめどは立たず、緊急事態宣言の地域は11都府県に拡大されました。今後も追加される可能性があるという話もあります。

 確かに、緊急事態宣言(以下、宣言)後は、街を歩く人が多少減ったような感はあります。しかし一方で、「人の動きや人手はあまり押さえられていない」という報道もよく耳にします。

「長引くコロナ対策に慣れてしまった」
「若い人の間では『かかっても重症化しにくいだろう』という楽観的な見方が広がっている」
「仕事を休めない」

 ・・・そんな理由をよく聞きます。

 社会、いや、世界全体が新型コロナ・ウィルスに振り回されたこの1年。その全体を振り返って、つくづく感じるのは「正義を振りかざして他者を攻撃する」人が増えたということです。

 ベストセラーにもなった脳科学者の中野信子さん著書『人は、なぜ他人を許せないのか?』でも「正義中毒」という言葉が話題になりました。

「テラスハウス」事件

 思い出されるのは、フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演し、視聴者から誹謗中傷を受けた女子プロレスラーの木村花さんが、享年22歳という若さで自殺した事件です。

 つい最近、警視庁が「ツイッターで中傷する投稿を繰り返した」として、20代男性を書類送検する方針を固めたとの記事を読みました。
男性は5月中旬ごろ、木村さんのツイッターの投稿に「生きてる価値あるのかね」「ねぇねぇ。いつ死ぬの?」などと匿名で複数回書き込み、侮辱罪の容疑がもたれているそうです。

マスメディアの「正義中毒」

 ところが今も、視聴率稼ぎのため、悪感情をあおったテレビ局の責任はいまだ問われません。弱い者を利用して、都合の悪いときはほおかむりを決め込む。まるでどこかの政治家のようです。

 たとえ少数派となったとしても権力者を監視し、弱者を代弁するーーそんな「真の正義」たるジャーナリズムの役割を昨今のメディアはほとんど果たしていないような気がします。
 それどころか、大多数と一体化して決して反撃できない者をなぶり者にし、徹底的に避難しているというのが現状ではないでしょうか。

 そんなマスメディアの「正義中毒」を感じたのが、お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建さんが複数の女性と性的関係を持っていたという一件です。

理解に苦しむ

 記者会見時の「渡部さんにとって多目的トイレとはどんな場所ですか?」というメディアからの質問には、本当に吐き気がしました。「自分は正しい」というナルシスティックな思い上がりが、プンプンに匂っていました。

 複数の女性と関係を持つことがいいことだとは言いません。報道されているように、相手の女性を軽んじた扱いをしたのだとしたら、それも許されないでしょう。

 しかし、妻子がおり、芸能人という注目を集める立場にいながら、こうした行為が止められなかった彼の“病”には、それなりの理由や不安があるはずです。その事情も知らない者が一方的に責める行為は、たんなるいじめです。

 そもそも、夫婦関係、男女関係のことをどうして他人が「正しいの」「間違っているの」と声高に叫べるのかも、理解に苦しみます。

今やコロナに感染した方々までが対象に

 こうした「正義中毒」は、今やコロナに感染した方々やその家族、医療従事者にまで向けられています。

 どんなに用心していたって感染するときは感染します。それは一個人が対策を怠ったかとか、規制や自粛を守ったかという道徳の問題ではなく、政治や行政の感染症対策の問題です。

 そんな冷静な判断もできず、欲求不満解消のために安全な場所から弱い立場の者を攻撃し、正義を気取った気持ちでいる。

 ーー来年こそは、こうした「正義中毒」に振り回されない1年になりますように。

在宅イライラ

 一斉休校の遅れを取り戻すため、夏休みが短縮された一方、文化祭や体育祭などのイベントはほぼ中止、もしくは省略化されまた。
 毎日にメリハリは無く、楽しみもない。それなのに、「勉強だけはしろ」と言われるのですから、子どもたちが息切れを起こしても不思議はありません。

 親が家にいる時間が増えたことも、良かったのか悪かったのか。「家族団らんが増えた」という声も聞きましたが、そんないい家族ばかりではないでしょう。

 仕事を失って経済的に困窮したり、テレワークで「家が職場」になったため、家族にもその環境に適応するよう強いたり、顔を合わせる時間が増えた分だけ夫婦間、家族間の諍いが増えた家族も少なくはなさそうです。

テレビゲーム

 国立成育医療研究センターが行っている「コロナ×こどもアンケート」の第3回目の結果報告書が発表されました。
 全国の子ども2,111名、保護者8,565名、計10,676名から回答があった第3回目の報告の主な内容は以下のようなものです。

①(勉強以外で)テレビやスマホ、ゲームなどを見る時間が1日2時間以上のこどもは42%で、2020年1月と比べて41%が増えた。
②直近一週間で学校に行きたくないことが「ときどき」あったのは19%、「たいてい」が5%、「いつも」が7%。
③「家族が、コロナに関連して家での生活を変える理由をわかりやすく教えてくれるか」への回答は、「全くない」が10%、「少しだけ」が12%。
④「教師がコロナによる生活の変化に関連した考えを(あなたが)話せるように、質問したり確かめたりしてくれるか」への回答は、「全くない」が10%、「少しだけ」が12%。
⑤何らかのストレス反応がみられたこどもは、全体の73%。

 もちろん、虐待はあってはならないことです。しかし、親との分離は子どもの人格形成に大きな影を落とします。容易に引き離すことは許されません。

 虐待や親の精神疾患などの問題で、親子分離せざるを得ない状況があったとしても、重視すべきは親との再統合です。虐待親であるならば、なぜその親は虐待してしまうのか、どういう援助があれば親は変わることができるのかなどを明らかにすべきです。

 どうしても子どもを世話できない親であるならば、一緒に暮らすことは無理でも頻繁な親子の交流をどう保障するのかを考えなければなりません。

乳児

「『乳児に虐待』児相が誤認→両親1年3ヶ月別離」(『東京新聞』20年10月16日)という記事を読みました。

 この記事によると、兵庫県明石市で2018年に「子どもの右腕のらせん骨折は虐待」として、当時生後2ヶ月の子どもが児童相談所に一時保護されることになり、その後、1年3ヶ月もの間、乳児院で過ごしました。
 明石市長は、「大切な期間に長期にわたり、親子の時間を奪ってしまい申し訳ない」と謝罪したそうです。

「愛」という名のやさしい暴力

 扶桑社より、『「愛」という名のやさしい暴力』が出版されました。『すべての罪悪感は無用です』に続く、精神科医・斎藤学先生の名言集&その解説の第二弾です。

『罪悪感は無用です』が、機能不全家族で育った人が楽に生きられるようになるための指南本のような要素が強かったのに対し、『「愛」という名のやさしい暴力』は主に共依存を中心とする「家族の『「愛」という名のやさしい暴力』問題」、「女らしさ」や「男らしさ」などの「らしさの病」に関する名言が多くなっています。