希望と絶望の分岐点(1)
一か所にカメラを据え、そこにやってくる人々の人生や生活などの人間模様を72時間にわたって定点観測する NHKの『ドキュメント72時間』というドキュメンタリー番組を見ました。
その日の舞台は、パキスタンの首都イスラマバード。アフガニスタン料理のレストランから始まりました。わざわざ「始まった」と書いたのは、なんと撮影開始早々にレストランから撮影を拒否されてしまったから。
その後の撮影は、レストラン近くのストリートで行われ、そこで出会った人の自宅を訪れるなど、異例の展開になっていきました。
身の危険を感じる人がいたため撮影拒否
番組の後半、その理由が明らかになりました。レストランのオーナーが「ドキュメンタリーは価値のあることだからOKしたけれど、お客の中にはタリバンを恐れ、カメラに映ることさえも嫌がる人がいた」と、突然の取材拒否を謝罪したのです。
NHKの同番組(『異国の地 アフガニスタンの食堂で』)の紹介ページには、「40万人以上が隣国パキスタンに逃げてきた」とあります。身の危険を感じる人も多くいたのでしょう。
先の見えない生活
このレストランのスタッフ25人も、全員アフガニスタンから逃げてきた人たちです。彼らは夜になると店内のいたるところで雑魚寝し、朝になると仕込みを始めるそうです。
3人の子どもと妻と一緒に、18時間かけて逃げてきたというコピー店で働く男性は、「日々の食事はタマネギとジャガイモを炒めたものだけ」と話していました。
ストリートで物乞いする女性と小さな子どもたちもいました。ひとりやふたりではありません。何十人という女性や子どもが、みな夫や父親などの大黒柱を失い、買い物客がナンを恵んでくれるのをひたすら待っていました。
アフガニスタンから避難してきた人が夜になると集まるサッカーグラウンドでは「難民として生きるのは大変だし、みんな経済的問題も抱えている」と語られていました。
どの人も、命からがら逃げ延び、異国の地で、先の見えない生活を送っているように見えました。