戸田市中学校侵入傷害事件に思う(1)
2023年3月1日の昼間、埼玉県戸田市の中学校にナイフを持った17歳の少年が侵入し、男性教員を傷つける事件が起こりました。
殺人未遂容疑で現行犯逮捕された少年は、「だれでもいいから人を殺したいと思った」と話しているそうです。
また、戸田市の隣にあるさいたま市では猫の死骸が校庭や公園に放置される事件が2月に5件起きていて、少年は「自分が殺した」とも供述しているとか。
10代の自殺が最多
いったいどうして、「だれでもいいから人を殺したい」と思うようになったのか。どんな気持ちで猫を殺害していたのか。どうして試験が行われている中学校にあえてナイフを持って侵入したのか。
これからの報道を注視していかなければ、なんとも言えません。
が、なぜかこの日、事件後に目にした「22年に自殺した小中高生は512人で、はじめて500人を超え、最多になる見通し」というニュースが気になりました(『毎日新聞』23年3月1日夕刊)。
文部科学省によると、近年は学業不振や入学試験の悩みを理由にした自殺が増えており、内訳を見ると男子高校生の自殺が増加しているそうです。ちょうど、事件を起こした少年と同世代です。
自己破壊と他者破壊の根は同じ
精神分析医のカール・メニンジャーは著書『己に背くもの』で、自己破壊の衝動は、他者破壊の衝動と同じものだと指摘しています。
その源は、「自分など生まれてこなければよかった」という確信で、その絶望と恨みの恐ろしさを私たちに突きつけた事件はたくさんあります。
たとえば、子ども8人が殺害、教員ふたりを含む15名が負傷した大阪教育大付属池田小事件(2001年)や、7人が死亡、10人が負傷した秋葉原殺傷事件(2008年)の犯人はその典型でした。
いずれも、自分の人生に嫌気がさし、自暴自棄に陥ったあげく、他者を道連れにしようとしての犯行でした。
こうした自己破壊の衝動を本人は意識できません。気づかないうちに、いわゆる無意識下で生まれ、問題行動、反社会的行動として表面化するのです。