『Spare』の人生(2)

話は少しそれますが、先進38カ国の子どもの幸福度を調査したユニセフ報告書「レポートカード16」(2020年9月発表)によると、日本の子どもの身体的幸福度は1位、精神的幸福度は37位でした。

つまり、「物質的には恵まれいても、心は満たされていない」ということです。
物に溢れ、飢えが無く、衛生的で、あらゆるものがそろった環境にいても、それだけでは人は幸せを感じないということです。

ヘンリー王子の生き様は、その事実を改めて、私たちに突きつけています。


ずっと傷ついてきた王子

イギリス王室に生まれ、何不自由の無い暮らしを送り、美しい妻に恵まれても、彼はちっとも幸せそうではありません。

10代の時にはコカインの力を借り、おとなになった今は恨みの暴露をしなければならないほどに傷ついています。

自分を「スペア」として扱ってきた(少なくとも本人がそう思っている)周囲への怒りと憎しみとらわれてずっと生きてきたのでしょう。

必要な確信

私たち人間が、「自分は幸せだ」と実感し、「この世は自分の味方である」と思いながら生きていくためには、「この世のたった一つの宝として、愛され、望まれて生まれてきた」という確信が必要です。

その確信さえあれば、さまざまな逆境を耐え抜き、人を信頼し、自分の人生を肯定的にとらえて生きていくことができます。

『Spare』が教えてくれていること

「あなたは決して替えの効かない、唯一無二の大切な存在である」

子どもはいつでもそう言ってくれる身近なおとなを求めています。

そうしたおとなに出会えなかったとき、その影響はおとなになっても続き、周囲がうらやむような生活を手に入れたとしても、本人を苦しめ続けるーー。その事実をヘンリー王子の『Spare』という自叙伝は私たちに教えてくれています。

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Posted by 木附千晶