希望と絶望の分岐点(2)

番組を見て驚いたのは、そんな大変な生活の中でも、多くの人が「未来」や「希望」を語っていたことです。

緑内障の治療のため、バスで22時間かけて病院へ行くという30歳の青年は
「少しでも良くなったら飲食店を立ち上げたい。人間は希望を持っているから生きて行ける。僕は希望を持って前へ進む」
と話していました。

中学3年生で逃げてきたというあるレストランスタッフは、
「希望は捨てていない。いつか学校へ戻れる日が来ると信じている」
と言います。

露店で、義兄とともに揚げパンを売っていた13歳少年は、今は学校に行けていなくても「夢は英語教師」と、覚えたての英語を披露してくれました。

「先の見えない生活」の中にいても、当然のように前に進もうとする人々の瞳は輝いていました。


不幸そうな日本の子ども・若者

なぜか、私が日頃、会っている若者や子どもたちの顔が浮かんできました。

きちんと家があり、食べる物に困らず、いくらでも学校に通える子どもや若者たちです。
アフガニスタンで難民として暮らす少年や若者に比べ、はるかに恵まれた境遇にいるはずなのに、ずっと暗い顔をしています。

マスクと長い前髪で顔を隠し、うつむく子ども。蚊の鳴くような声で自信なさげに語る若者。夢どころか本心や本音さえも見失ってしまったかのようです。

精神的幸福度の低さが象徴的

「こうしなければ」はあっても、腹の底から「こうしたい」と熱望すること・ものがある子ども・若者はまれです。

だから「自分らしさ」が分からず、アイデンティティも揺らぎます。「自分は何者で、どう生きるのか」という確信が無いのです。それでは「生きる意味」を見つけることも難しくなるでしょう。

「自分が何者か」が確信できないから、よけいに周囲の評価や他者の目が気になります。自分が無ければ、ちょっとした他者の言動に振り回され、傷つきます。それを避け、どんどん殻に閉じこもり、窒息しそうな毎日を生きています。

2020年に発表されたユニセフ調査によると、日本の子どもの精神的幸福度は、先進国38カ国中37位という驚きの低さです。

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Posted by 木附千晶