実は、人間が持つさまざまな能力を伸ばすには、競争よりも「みんなで伸びる」ことを目指す犬山のような教育の方がはるかに効果的です。
協同教育を研究している中京大学の杉江修治教授(教育心理学)は『全国学力テスト、参加しません。—犬山市教育委員会の選択』(明石書店)で、こう書いています。
「最近の教育改革では、教育に競争原理を導入しようという議論が多いのですが、競争が効果的だという話はそのほとんどが神話(根拠のない空論)に過ぎず、協同が一貫して有効なのだということが実証研究では明らかになっているのです。(略)競争と協同とを比較すると、学習でも作業でも、ほぼ一貫して協同のほうが効果的なのです。競争は勝つ見込みのある一部の人しか意欲づけることはありません。また、自らの成長より人に勝つことのほうが目的になってしまいます」(90頁)