私たちの社会は、「親は子どもを愛するもの」という幻想を抱いています。
もし、そこに疑いを抱いてしまったら最後。多くの人が「自分の親も無償の愛を注いでくれた人ではなかった」という現実に直面しなければならなくなってしまうからです。
多くの人が自らの感情にはふたをして「いろいろ辛いこともあったけれど、親は自分のことを思ってくれていたんだ」と、自らを納得させます。そうして、かつて親が自分にした残酷な仕打ちは「なかったこと」あるいは「ありがたいもの」にして、親と同じように子どもに接します。
だから、子どもが親や社会への反抗とも取れる事件を起こしたりすると、
「親は出来る範囲で、その親なりに子どもを愛してきていたのに、愛を感じられない子どもの方にこそ問題がある」
と、子どもを責めます。
心理の専門家のなかにも、事件を起こした少年たちに対して「(親に)愛があるのに、子どもに届いていない」などと言う人もいます。