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朔さんは言います。

「絵も文章も、自分自身を追求する手段。だけど、絵は文章と違う。頭で考えたアイディアを形にしているわけじゃない。生活そのものから描いている。だから行き詰まることもない。今は描くことが楽しいし、毎日が充実している。絵を描く醍醐味を感じているんだ。もし文章を書き続けていたらこうはいかなかったろうね。今頃、死んでいたかもしれない」

実は朔さん、かつては新聞記者でした。色彩豊かな絵を描くようになったのも取材で出会った芸術家・岡本太郎氏に影響を受けたから。当初は、文筆業の傍ら、鬱積した気持ちをぶつけるために絵を描いていたのです。

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image070326.jpg作品は「今この瞬間を生きる石山朔」

それにしてもなぜ、こんなにも巨大なキャンバスが必要なのでしょう。朔さんに聞いてみました。

「86年の人生と思想があって、その生き様を表現している。自分自身の体と人生をぶつけて描くんだから、やっぱり大きくないとダメだよ。できることなら、もっと大きいキャンバスに向かいたいんだ」

500号は画材屋が布を張ってくれる最大の大きさであり、朔さんが一人でキャンバスを回しながら描くことができる限界であり、アトリエに入るギリギリのサイズなのだそう。

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S.A.K.U. PROJECTとは?

S.A.K.U. PROJECTとは、「石山朔と彼の作品が世界中で愛される芸術的遺産として認められるようになること」だけを目標にしたプロジェクトです。

展覧会を企画・主催したり、ホームページを運営したりするなど、朔さんに関するプロデュースやPR活動を一手に引き受けています。2007年に横浜バンカート(神奈川県)で個展が開かれ、その様子がNHKで紹介されてからはインターネットを通して問い合わせが殺到し、嬉しい悲鳴を上げています。

そう聞くと、とてつもない大プロジェクトかと思いがちですが、メンバーは朔さんの孫でS.A.K.U. PROJECT代表のエリスさんとその奥様を中心とした家族6人。庭で遊んでいたひ孫さんが最年少メンバーです。

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フレンドリーな「おじーちゃん」

「こんな壮大な作品を描く石山朔さんとはいったいどんな人なのだろう?」

自宅をかねたアトリエを訪ねたときは、正直言ってちょっと緊張していました。ピカソやゴーギャン、ムンクなどが頭をよぎります。孤独や苦悩を抱えた気難しい巨匠たちの、孤独や苦悩、不安感、気難しそうなイメージが、まだ見ぬ朔さんに重なります。

ところが、会ってびっくり。今まだかつて会ったことがないほど、陽気でフレンドリーな「おじーちゃん」でした。

つい先日、とっても素敵な「おじーちゃん」にお会いしました。お名前は石山朔さん。86歳にして「日本抽象画界の大型新人」と目されている希代の芸術家です。[石山朔ホームページ

2007年3月19〜30日の間、東京・日本橋のDIC COLOR SQUARE「迷走する色彩〜hue-meditation〜」で見ることができます。

絵心など皆無の私でさえ朔さんの作品には目が釘付けになります。何しろ、絵のサイズが半端じゃない。油絵に使っているキャンバスは、なんと500号!
・・・と言ってもピンと来ない方も「約畳6畳分」と言えば驚きが伝わるでしょうか。
そんな超巨大なキャンバスが100を超える色で埋め尽くされているのです。

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image070306.jpg「家族のなかみ」こそ大切

このように言うと、「夫婦別姓や事実婚を認めたら家族が崩壊する」と、反論する人たちがいます。
婚姻制度という“ちょうつがい”を外したら、夫婦も家族もバラバラになってしまうから、そんなことはとうてい許すことができないというわけです。

でも、そんな家族(夫婦)は、すでに家族としての機能ーー愛情や共感、温かさや尊敬、安心や自由などをお互いに与え合うことーーを失っています。
そのいちばん大切な部分を無くし、バラバラになった人々を無理やり家族という器に押し込めようとすれば、かならずどこかに歪み=病理が生じます。

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image070305.jpg「家族神話」の呪縛

子どもと家族を応援すること大賛成ですが、「家族のなかみ」を考えることなく「家族、この素晴らしきもの」と言い切ってしまうことには、違和感を覚えずにはいられません。

確かに、
「お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ」
と思えるような家庭で子どもが育つことは理想的かもしれません。子どもが
「そういう家族が仲良く暮らすのが一番幸せだ」
と思えるような家族に囲まれて暮らすことができれば、とてもいいでしょう。

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「夫婦別姓反対増」のカラクリ

「家族のかたち」と言えば、つい最近、夫婦別姓に関する内閣府調査が発表されました。 マスコミ各社は「夫婦別姓 反対増える」「夫婦別姓は減った」と報道していましたが、実はこの調査結果にはカラクリがありました。反対派の年齢構成が熟年層に偏り、回答者の86%以上が既婚者だったのです。

2007年2月10日の『東京新聞』は、「これから結婚する人の意見が反映されていないのはおかしいのではないか」、「前回の調査の方がまだ現実の人口構成に近かった」として、内閣府の「若い層は昼間仕事に出ていたり、回答拒否が多い」というコメントを批判に論じています。
私もまったく同感です。だって、「今後の施策の参考とする」ための調査と公言しているのですから。

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image070226.jpg家族とは何か

そんな重いショート・ストーリーが続く中、漫画家の内田春菊さんが書き下ろしたラストの作品「フィリピンパプで幸せを」に、ホッとしました。
ケタ外れの金持ちで性同一性障害のフィリピン人女性(元男性)と日本人男性のラブ・コメディです。

男性は、初めて行ったフィリピン・パフで知り合った女性と一夜を共にします。ところが、朝目が覚めてビックリ。女性の自宅はとんでもない大邸宅で、男性は寛大な女性の両親と妹たちからものすごい歓待を受けます。話はトントン拍子に進み、女性とその家族から結婚を迫られます。

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image070223.jpg無邪気な残酷さ

なかでも印象的だったのは「代理母ビジネス」というショート・ストーリーでした。

主人公は依頼者の男性とセックスし、男性の妻に替わって出産するという出産代行業を営むフィリピン女性・ララ。
ララは「貧困から脱するためのビジネス」と自分に言い聞かせながらも、女性としての尊厳を踏みにじられ、母としての人生を手放すことに苦悩します。大金を手にした満足にひたりながらも、「愛する人と結ばれ、子どもを育てたい」と心を引き裂かれるような苦しみを味わいます。