昇華された“怒り”(4/6)

2019年5月29日

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image070326.jpg作品は「今この瞬間を生きる石山朔」

それにしてもなぜ、こんなにも巨大なキャンバスが必要なのでしょう。朔さんに聞いてみました。

「86年の人生と思想があって、その生き様を表現している。自分自身の体と人生をぶつけて描くんだから、やっぱり大きくないとダメだよ。できることなら、もっと大きいキャンバスに向かいたいんだ」

500号は画材屋が布を張ってくれる最大の大きさであり、朔さんが一人でキャンバスを回しながら描くことができる限界であり、アトリエに入るギリギリのサイズなのだそう。


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インスピレーションに任せて描くため下絵は描きません。ぶっつけ本番で構図を取り、後は毎日コツコツと、その日、その時にひらめいた色を置いていきます。一見、粗野にも見える大胆な色と形が、その瞬間の心の動きであり、インスピレーションであり、感性・・・つまり、「今この瞬間を生きる石山朔」を表現したものなのです。

自由に、そのときの感情や思い、心の状態にふさわしい色をキャンバスにぶつけていくのが朔さんの描法。本人曰く「その作業は日記を書くようなもの」だそうです。
使う道具も、そのときさまざま。筆、布、綿棒、竹、指や爪までも駆使し、渾身を力で描く。没頭すると、食事も忘れ10時間近く立ちっぱなしで作業を続けることもあります。

来る日も来る日もキャンバスに向かう朔さん。その原動力は“怒り”だと、エリスさんは言います。
朔さん自身も本(『Saku Ishiyama 石山 朔〜o sole mio』)の中で、こう書いています。

「表現の根源にあるのは虚実と偽善に対する反抗であり、粗野で荒々しいその中に真実を求めようとする。その強さと重さを増大したい思いからキャンバスの大きさを必要ともする」

確かに、ていねいに塗り込んだ色や、それを拭き取った跡、躍動するような線などを見ていると、不器用なほどまっすぐな生き様と生来の繊細さが調和し、ひとつの思想世界を創り上げていることが分かります。(続く…

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Posted by 木附千晶