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昨今、身近なおとなときちんとした愛着形成ができていないがゆえに、犯罪や非行行為などのいわゆる問題行動を取るのだという研究が進んでいます。
科学の発展によって、虐待などの不適切な養育が脳にどのようなダメージを与えるのかが分かってきたのです。

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では、事件は防ぐことはできない悲劇だったのでしょうか。
私はそうは思いません。

報道によると、不登校だったこの男子生徒は、友人に「学校に行きたいけど、行けない」とつぶやいてみたり、年上の少年から暴力を受けており「殺されるかもしれない」と漏らしたりもしています。

同級生ら身近な友だちの間では、男子生徒がかなり危ない状況に置かれていることは、周知の事実でした。
しかし、子どもたちのだれもが、この事実をおとなに打ち明け、おとなに助けを求めようとはしなかったのです。

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罪を犯した責任を「子ども自身に問題があるのだ」と考え、罰し、責任を負わせることは、私たちおとなにとって、とても楽で、ついついそうしたくなってしまいます。

以前、ある本の編集者が私にこんなことを言っていました。
「子ども関連で売れるのは『子どもの側に問題がある』という視点で書かれた本です。テーマは子育てでもいいし、社会現象の本でもいい。大事なのは、『おとなの側には非がない』ということがはっきりしているかどうかです。そういう本であれば、おとなは安心して読めるから、手に取りやすくなるのです」

ちょっとキツイ表現で、平たく言い直せば「けっしておとなである自分は責められない。自分自身の過去や生い立ち、自身の親との関わりや子どもとの向き合い方を根本から考えなおす必要もない。今までの自分はいっさい揺らぐことなく安全な場所にいられて、『子どものことを考えている』ような気分が味わえ、『そんな子ども(若者)が増えた社会を憂えている』という満足感も得られるものが受ける」・・・ということでしょうか。

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前にこのブログでもご紹介しましたが、『バッド・マザーの神話』(誠信書房)という本を書いたアメリカの臨床家・ジェーンスウィガートは、こんな指摘をしています。

「私たち(おとな)の行動が真に破壊的になると、子どもたちはギョッとするような悲劇的なやり方で警告してくれます。ティーンエイジャーの自殺やうつ病、暴力事件の増加や学校における不法な薬物の蔓延などで、このような現象は低年齢化し、いまは思春期前の子どもの間にまで広がってきています。子どもたちの行動の意味するところや子育ての心理的な現実を探ることによって、私たちの病める時代が抱える病弊のより深い意味を理解することができるのです」(307頁/引用冒頭の(おとな)は筆者が加筆)

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この3月を振り返っても、「血で血を洗う戦い」は一向に止む気配は無く、一般臣民の犠牲も増えています。

アラビア半島のイエメンでは、自爆テロによって77人が死亡(3月20日)。チュニジアの首都チュニスにあるバルドー博物館ではイスラム過激派に海外旅行客が襲撃され、日本人3人を含む23人が死亡する悲劇も起こりました(3月18日)。

報道されることはほとんどありませんが、シリアではアメリカを中心とする有志連合の空爆によって多くの市民が命を落とし、死の恐怖と隣り合わせで暮らしていることでしょう。

これはもう「社会の問題」を超え、世界全体が機能不全に陥っていると言っても過言ではないでしょう。

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そんな考えに確信を与えたのは、イスラム国によるふたりの日本人人質事件をめぐる日本政府の対応です。

驚くことに、ふたりがすでに数ヶ月にわたってイスラム国に拘束されていることを知りながら、救出に向けて積極的かつ有効な対策を取ってきませんでした。

それどころか、安倍首相はわざわざ中東を歴訪し、歴訪先のエジプトで「イスラム国の脅威を食い止めるべき」と発言し、イスラム国対策として2億ドルを支援することを表明しました。

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優しさや安全感が欠如し、人間が“人間らしく”生きることができないような社会になってしまっていることは、日々のニュースを見ていてもひしひしと感じます。

安倍首相にはその認識は無いようですが、一般的な感覚から言えば所得格差の広がりはどう考えても拡大しています。

その大きな要因となっているのが、非正規労働者の増加です。兼業主婦によるパートやアルバイトを含む数字ではありますが、最近の統計では労働者のやく4割が非正規雇用にあたるそうです。
(参照元:パートやアルバイトは増加継続…非正規社員の現状をグラフ化してみる(2015年)(最新) – ガベージニュース

こうしたなかで、政府が1月に閣議決定した2015年度予算案では生活保護費が削減され、介護報酬の総額が引き下げられるなど、低所得者への対策は後退しています。一般庶民の立場から言えば、「デフレからの脱却」というよりも、「物価の上昇」が生活を圧迫しはじめています。

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もし、日本の家族の80%が、機能不全に陥ってるのだとしたら、今、世の中を生きているほとんどのおとなはアダルトチルドレン(AC)ということになります。

多くの人が、「自分には価値がない」と思っていたり、 人の目(評価)を異常に気にしたり、必要以上に「完璧でなければならぬ」と思っていたり、いつも対人関係にトラブルを来してしまったりする「生きづらい」人間であるということです。

もし、こういう人たちが本当に増えているのだとしたら、それはもう「家族がうまく機能していない」というレベルでの問題ではありません。

その家族が所属する社会に問題があるということではないでしょうか。

新年あけましておめでとうございます。
松も取れ、鏡開きも終わり、お正月気分も抜けてすっかり「日常」に戻ってしまった感もありますが、おくればせながらご挨拶申し上げます。

9年目を向かえる「カウンセラー木附が語る子どもと社会」を今年もどうぞよろしくお願いいたします。

毎年、新年になると「今年こそは良い年になりますように」と願っています。お参りに行ったときには「あらゆる命が幸せに生きられる1年になりますように」と必ず、願をかけます。

でも現実には、毎年毎年、どんどんだれもが生きづらい社会、子育てしにくい社会になっている感が否めません。

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ところが実際には、前にご紹介した高校生の女の子のようなことが起きています。

そしてそれは、びっくりするほどのレアケースでも無いようです。ここ1年あまりの間に子どもの権利のための国連NGO・DCI日本のオンブズマンには、「児相が子どもを連れて行ってしまい、会わせてもらえない」という相談が6件ほど寄せられています。

相談者のひとりであるある母親は、神奈川県内の児相により、2010年に4歳(当時)だった長女と引き離されました。

元夫からのDVが原因で抑うつ的になっていたため精神薬を多用し、その影響で死にたい気持ちが増すなどの症状があったことを受け、精神科医が「子どもの世話ができる状態ではない」と判断したことが、引き離された理由でした。