日本の子どものことを憂い、前回、紹介した通り「競争と管理、暴力にあふれたなかで、子どもが自分の思いや願いを出せる人間関係を持てず、子どもの発達に深刻な影響が出ている」との『最終所見』を示してくれている国連に対し、日本政府はずっと真摯に向き合うということをしてきませんでした。
たとえば過去の報告書では、「前回、国連に提出した報告書を参照」と記述することがよくありました。本来であれば、「前回の報告審査で国連が指摘した内容にどう取り組んだか、もしくは取り組めなかったかをきちんと検証する」べきなのに、「前にも書いたことだから省略する」というような対応を平気でしてきたのです。
そうした前科がありますから、第4・5回日本政府報告書でも同様のことくらいはあるだろうと予想していましたが、今回はもっと挑戦的でした。
挑戦的な政府報告書
政府は、どれほどきちんと貧困対策や不登校対策を行ってきたかを強調し、「多様性を認める」「多様性を大事にする」教育を広げてきたとし、第4・5回日本政府報告書のパラグラフ123で次のように述べています。
「仮に今次報告書(第4・5回日本政府報告書)に対して貴委員会が『過度の競争に関する苦情が増加し続けていることに懸念をもって留意する。委員会はまた、高度に競争的な学校教育が、就学年齢にある児童の間で、いじめ、精神障害、不登校、中途退学、自殺を助長している可能性がある』との認識を持ち続けるのであれば、その客観的な根拠について明らかにされたい」
本当に、びっくりするような勇気のある発言です!
夏休み明けに多い子どもの自殺
例をあげれば、学校と自殺が大きく関連していることは周知の事実です。2015年の『自殺対策白書』によると、1972~2013年に自殺した18歳以下の子どもは計1万8048人。日にちべつに見ると夏休みが終わって新学期が始まる9月1日に自殺する子どもが131人と突出して多く、次いで9月2日94人、8月31日92人と、その前後が目立ちます。
今年の夏も、8月30日から9月1日にかけ、東京と埼玉で中学生や高校生計4人が首をつったり、マンションから転落するなどし、3人が死亡。いずれも自殺の可能性が高いと報道されています(『毎日新聞』2017年9月2日ほか)。
わざわざ統計など見なくても夏休み後半になると「自殺しないように」「学校に行かなくてもいい」と呼びかける報道番組等が放映されていることは、日本で暮らす人々ならだれでも知っていることです。それでも政府は「学校(教育制度)が子どもの自殺の要因とは関係ない」と言い張るのでしょうか。
20代の死因第一は自殺
また付け加えるなら、「おとなになったばかり」の20代の死因第一位は自殺です。なんと死亡原因の約5割に上ります(平成29年『自殺対策白書』)。他の主要国の同年代は事故死の方が多くことから、日本政府も白書でその深刻さを指摘しているほどです。(続く…)