子ども不在の国ーー第4・5回日本政府報告書に寄せて(6/6)
投薬の対象とされることが増えているのは、不登校の子どもに限りません。学校、つまり日本の教育制度に合わない子どもたちへの投薬治療は全体としても増加しています。
前回、引用した「多様性を認めない学校には行きたくない」という男の子の『子ども報告書』にも「扱いづらかったり、自分の意見を持って発言したり、授業がつまらないから勉強に身が入らないでいたりすると、すぐに『発達障害』にされる」との記述がありましたが、埼玉県在住の専門学校3年生の女の子もまた、虐待の疑いで母親と引き離された後、精神的に不安定になって「家に戻りたいと暴れたら薬を飲まされた」と『子ども報告書』に記しています。
大好きなお母さんと引き離され、暴れずにいられるほうがどうかしています!!
増え続ける子どもへの投薬
もちろん私も職業柄、投薬の必要な子どもがいることは否定しません。しかし、まだ脳が発達段階にある子どもへの投薬治療は、もっと慎重であるべきですし、『子ども報告書』にある例をからも「おとな(社会や国)が望むよう行動できないと、『精神、もしくは発達に問題あり』として投薬治療の対象とさえているという側面は否定できないと思います。
2010年に行われた第3回日本政府報告審査後、国連は「ADHDの相談件数が増加している」ことへの留意や「その症状が主として薬物によって治療されるべき生理学的障害とみなされていること、および、社会的決定要因に対して適切な考慮が払われていないこと」の懸念を『最終所見』パラグラフ60で示しました。
しかしそれ以降も、子どもへの投薬は確実に増え続けており、それを引き起こしている社会的要因まで考慮した抜本的な対策はまったくなされていないというのが実情ではないでしょうか。
子どもが意見表明できますように
子どもはおとな(社会や国)の所有物ではありません。おとな(社会や国)が望むプログラムをインストールすれば、その通りに動くロボットでもありません。
「守ってやっているから」「養ってやっているから」とその人格を否定することは許されませんし、おとなの都合に合わないからと薬をつかってどうにかしようとすることなど、あってはならないことなのです。
どうか2018年は子どもが、子どもらしい時間を過ごし、子どもらしく甘えたり、わがままを言ったり、おとなに向かって無理難題を押しつけたりできる年になりますように。子どもが思いや願いを自由に表明できるようになりますように。
その一環として、『子ども報告書』を書いた子どもたちが国連に行って、意見表明ができますよう、多くの方が応援(「子ども達を国連子どもの権利委員会での意見表明の場に派遣したい」)してくださることを願っています。