猶予期間(モラトリアム)のない子どもたち(2)
うっかり放浪もしていられない大学生の実情に思いを馳せつつ、さらに考えました。
「大学生以前に、そもそも日本の子どもたちに『猶予期間(モラトリアム)』なんていうものがあるんだろうか」と。
虐待死した女の子のノート
今年3月、東京都目黒区で5歳の女の子が父親に殴られて死亡しました。死亡後、女の子がつづっていたノートが見つかり、そこには次のように書かれていました。
「もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにもうおなじことはしません ゆるしてきのうぜんぜんできなかったことこれまでまいにちやってきたことをなおす
これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ」
「しつけでたたいた」という父
この女の子が残したノートに涙した人は多いことでしょう。ネット上にも「許せない」という書き込みが多数あり、児童相談所の連携の甘さや危機感のなさなどを批判する声があちこちで上がりました。
報道によると、女の子は、自ら目覚まし時計をセットして毎朝午前4時ごろに起床し、父親に命じられて平仮名を書く練習をしていたそうです。1人で寝起きする部屋は室内灯がなく、薄暗い部屋で繰り返し文字を書いていたともありました。
父親は、「これまでもしつけでたたいたことはある」と供述していましたから、まだ5歳の子どもに4時起きで勉強させることがことが「しつけ」だと思っていたのかもしれません。
虐待死に涙する一方で
私も、このノートが公開されたときにはとても大きな衝撃を受けました。どんな気持ちで女の子が毎日を過ごしていたのかと思うと胸がつぶれそうでした。
こんなことをされても子どもは親に愛されたいと願い、親に気にいられようと頑張るのだと思うと、虐待というものがいかに残酷なものかと、改めて考えさせられました。
しかし、それよりも考えさせられたことがあります。公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが20歳以上の男女約2万人を対象に行った調査(17年)への回答です。
同調査によると、子育て中の親の約7割は体罰の経験があり、おとなの6割近くが「しつけ」のためとして子どもへの体罰を容認すると回答したというのです(『朝日新聞』18年2月16日)。