私の知っている限り、なんらかの性的被害を受けている人は一定数いましたが、「必ずしも性的な被害を受けていた」というわけではありません。
共通点を挙げるとすれば、「本来、最も安心できるはずの家庭が、危険きわまりない場所であった」ということ。そして「だれよりも自分を守ってくれるはずの親(養育者)が、その人を最も脅かす存在であった」ということでした。
子ども時代に救われることはまれ
過酷な環境で生きる子どもが、子ども時代に救われることはまれです。ほとんどの場合、成長し、おとなになってから、メンタルクリニックやカウンセリングルームのドアを叩きます。
対人トラブルや、依存症、生きづらさを抱えながら。
ときには「人格障害」とか「躁うつ病」などの診断名を持っていたり、「アダルトチルドレン」という特徴を掲げていたりします。
複雑性PTSDと重なる人物像、予後
それが故に、自分を傷つけるような相手まで信じたり、頼ったりしてしまい、心根が純粋なために同じような被害体験を繰り返し、また傷つくという負のスパイラルに陥っていたりします。
目立つのは、「安全感の無さ」です。安全で無かったという生い立ちを見ていけば当然のことなのですが、つねに不安定で心安まることが無く、そのために対人関係にも困難を来しています。
たとえ「今は安全」な場所にいたとしても、こうした状態から抜け出すことはとても難しく、長引きます。人物像も、予後も、複雑性PTSDと重なります。
そんなふうに考えると、件の結婚発表会見に同席した精神科医でNTT東日本関東病院の秋山剛医師が、「インターネット上での誹謗中傷やいじめ、不特定多数の人からの言葉の暴力でも起こりえる」と、「長期にわたり誹謗中傷を体験された結果、複雑性PTSDと診断される状態になっておられる」と述べたことに、すんなり同意できない気持ちがします。