虐待からの回復ーー猫が教えてくれたこと(1)

デニクロ

ここのところ、虐待についての講座や研修をさせていただくことが続いています。
児童相談所の虐待対応件数が20万件を超えているせいなのでしょうか。それとも、おとなになってからも虐待が大きな傷跡を残すことが、理解されてきたせいなのでしょうか。
いずれにせよ、多くの人が虐待に関心をっているような気がします。

しかし、それでも、「何が虐待にあたるのか」についての理解はなかなか深まっていません。
殴る、蹴る、というような明らかな身体暴力や、ご飯を食べさせない、不衛生な衣服のままにさせるという典型的なネグレクトでないと、それが虐待であるとは思いにくいようです。

研修の中でも、「はっきりした虐待歴は無いのに、どうしてここまでの生きづらさを抱えているのか」とか、「被虐体験があればもっと共感的に寄り添えるのだが、そうでないと“わがまま”と感じてしまう」といった類いの意見がありました。


背景が分かると楽になる

デニクロ

支援の仕事をしていると、思いが伝わらなかったり、善意を悪意で捉えられたり、何をしても裏切られる、無力化させられるというような方に出会うことがあります。

「どうしてこんなことを言われなければならないのか」
「支援者だって傷つくということが分からないのか」

など、嘆きたくなることがあります。
そういうときに、その方の背景や生きづらさの根底にあるものが理解できると、支援者自身が救われることにつながります。

「これだけ裏切られてきたんだから、なかなか他人を信用できないよね」
「たくさん力を奪われてきたという辛さを、支援者を無力化することで表現しているんだよね」

そんなふうに思えると、今よりずっと楽になります。

知識が助けてくれる

人間の発達や、発達心理学、子どもの権利条約などの知識が、手助けになることもあります。

発達(develop)の語源を紐解けば、dis(否定を表す接頭語)+ velop(包む)です。つまり、「生来持っている能力や可能性を表出させる、包みを開き発展させる」ということです。
人間として生まれたからには、人間として必要な能力の種をすべて持って生まれてきています。たとえば、共感能力、基本的信頼感、自己肯定感、自律心などです。

私たちは子どもに対し、さまざまな能力や知識を外から何かを教え込もうとしますが、そんな必要は無いのです。

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Posted by 木附千晶