虐待とは何かーー宗教虐待から考える(1)

安倍晋三元首相の襲撃事件以降、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題が次々と明るみに出てきました。

そのひとつが信者である親からの特定の“教え”に基づく子どもへのしつけ・教育方針等に関する問題などです。

信者を親に持つ、いわゆる宗教二世の人たちが「児童相談所や警察に訴えても、宗教を理由に対応してもらえなかった」などと発言し、その苦しかった子ども時代が世に知られることとなりました。


国の通知

こうした中、22年10月6日、厚生労働省は全国の自治体に信仰を理由にした行為でも児童虐待に当たる行為はあり得るとの通知を出しました。
「保護者の信仰に関連することのみをもって消極的な対応を取らず、子どもの側に立って判断すべき」と明記し、適切な判断と対応をとるよう求めたのです。

信仰が理由であっても、①身体的暴行を加える ②適切な食事を与えない ③重大な病気になっても適切な医療を受けさせない ④言葉による脅迫、子どもの心・自尊心を傷つけるような言動を繰り返す――といった行為は、児童虐待に該当する可能性があると例示。虐待にあたるかどうかは、子どもや保護者の状況、生活環境などに照らし、総合的な判断を呼びかけたました(『朝日新聞』22年10月7日)。

また、同日、文部科学省も、「児童生徒の心のケアを図る必要があると考えられる事案があった場合には(中略)、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと共にチーム学校として、教育相談に取り組むこと」といった通知を出しました。

通知への違和感

こうした通知に違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。

厚労省が例示した①は身体的虐待、②と③はネグレクト、④は心理的虐待にあたります。どこから見ても立派な? 児童虐待です。
それなのに、何をもとに、どう「総合的に」判断するのか。

文科省の通知もまた、しかりです。
「子どもの心のケアを図る必要があるときに、チーム学校として取り組む」などというのは、あまりにも基本的な話です。

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Posted by 木附千晶