虐待からの回復ーー猫が教えてくれたこと(2)
植物を見ればよく分かります。ひまわりは、ひまわりの花を付ける、バラはバラとして咲く、サボテンはサボテンとして生きるための“もと”を全部、種の中に持ってこの世に誕生します。
ただし、ひまわりがひまわりとして、バラがバラとして、サボテンがサボテンとして立派に成長するためには、それぞれが必要とする、それぞれが持っているニーズを満たされる必要があります。
サボテンにじゃぶじゃぶと水をやったら、枯れてしまいます。虫の多い環境ではバラは大輪の花を付けませんし、日陰でひまわりは育ちません。
それぞれの植物が持っている特性に合わせた環境や土壌が必要です。植物の特性を無視しして、人間の都合に合わせて育てようとしたら、植物は美しい花を見せてはくれないでしょう。
その子のニーズに応えることが大事
人間の子どもも同じです。
近年の発達心理学は、周囲のおとなが、ひとりひとり違うその子どものニーズに適切に応え、安心感や安全感を持つことができたかどうかが、自己肯定感や基本的信頼感、共感能力などを備えた人格の完成のために不可欠であることを明らかにしています。
近年の発達心理学は、周囲のおとなが、ひとりひとり違うその子どものニーズに適切に応え、安心感や安全感を持つことができたかどうかが、自己肯定感や基本的信頼感、共感能力などを備えた人格の完成のために不可欠であることを明らかにしています。
また、子どもの成長発達のための英知が詰まった子どもの権利条約は、発達心理学が言う「調和の取れた人格」となるためには、「幸福、愛情及び理解ある家庭」が必要であると謳っています。
つまり、「たとえ何もできないちっぽけな自分であっても、ここにいていいんだ」という感覚を持つことができ、「求めれば周囲は助けてくれる」と信じることができる環境で育てば、子どもは、持って生まれた能力を開花させ、発展させることができるのです。
不適切な養育の結果
もし、目の前にいる人が共感能力が無かったり、自己肯定感が低かったりして、周囲を信用できず、自ら生きて行く能力が無いように見えるのだとしたら、それはその人が、愛情や理解のある家庭で育つことができなかったということです。
その人が必要とするニーズに応答してくれるような環境ではなく、幸福感を持って生きてこれなかったということです。
たとえ明らかな虐待に見えることが無くても、その生育環境は、その子どもにとって不適切な養育であることには違いないのです。