本当に何らかの法律をつくることによって、いじめが日常化した子どもたちの状況を救うことができるのでしょうか?
そもそも、昨今のいじめとはどのようないじめなのでしょう。
ある教師に尋ねたところ、かつては「おとなに見えにくいいじめ」として話題になったインターネットを使ったいじめは、すでに当たり前だそうです。
たとえば学校で「キモい」と言われている子に無理やり告白させたり、待ち合わせをすっぽかしておいて当惑する姿を隠し撮りして動画で流したり、マスターベーションを強要して撮影し、仲間内で共有したりするなどは、めずらしくないのです。
でも、こうしたいじめは、新たに法律などつくらなくても、すでに教育委員会やNPOなどがサイト上を巡回していじめや犯罪につながる情報を見つけ出す「ネットパトロール」などで取り締まることはできます。
ところが、今、教師の人たちが対応に困っているのは「遊びと区別しにくいいじめ」です。
遊びと区別しにくいいじめ
たとえば掃除のとき。大勢でひとりの生徒をロッカーに閉じ込め、笑ってはやし立てる遊びをする子たちがいます。
最後は、閉じ込められた生徒が「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーン」などとおどけてロッカーから飛び出して来て終わるのだそうですが、見ていてけして愉快なものではありません。
見かねた教師が注意すると、閉じ込めた側ではなく、閉じ込められた生徒自身が「おきまりのコース。みんなここまでしないと収まらないから」と、その行為を肯定する発言をしたそうです。
また、だれもが嫌がる便器掃除を率先してやり、自分のことを「便器マン」と呼んで、周囲にもそう呼ばせて笑いを取る子などもいるそうです。
「笑いを取れる」は最重要課題
今の子どもたちにとって、「笑いを取れる人」であることは学校生活を送る上での最重要課題です。「笑いを取れない=暗い=友達がいない」と思われることを極端に恐れます。
だから、即興で笑いが取れる下ネタや自分を下に見せるような言動で“いじられる”よう持っていくのです。(続く…)