道徳や説教で子どもが救えるか?(2/4)
2019年5月29日
『当面の方策』は、「だれよりもいじめる側が悪い」という認識に立って出来上がっており、「弱い者をいじめることは人間として許されない」と強調しました。
当時の文部省職員は、緊急対策のみとなった理由を
「受験競争の弊害など、諸説がいわれているが、原因を追及していたら、中教審で3回の論議は必要。教育の基本論に立ち返るのはやめて、取り急ぎどう防ぐかをまとめた」(『教育新聞』95年3月16日付)
と話しています。
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以後、確かに統計上は公立学校でのいじめは減りました。『当面の方策』が出された95年のいじめ発生件数は6万96件ですが、05年には2万143件になっています。また、95年に6件あった「いじめを主たる理由とする」自殺件数は、99〜05年までは0件とされてきました(今月になって文部科学省がこの統計を見直し、再調査を開始しています)。
教育の基本論に立ち返ることなく、いじめの原因を探ることもなく、ただ統計上の発生件数を減らすための対策がどんなものだったのかーー。今、子どもたちは命をかけて教えてくれています。
私の経験に過ぎないかもしれませんが、子どもの現状に心を痛めるおとなたち、何より子どもたち自身に話を聞いたとき、この10年間で「いじめが減った」と思ったことは、ただの一度もありません。それどころかいじめは、教室に当然あるべき“風景”のようになってしまい、「あってはならないこと」という危機感さえも薄れてきてしまっているというのが実感です。(続く…)
Posted by 木附千晶
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