いじめ防止対策推進法は子どもを救う?(4/9)
2019年5月29日
前出の教師が、「それはいじめじゃないの?」とやられている側の子に尋ねたときも、「いじめなんて言われたらプライドが許さない」との答えが返ってきたとのこと。
やられている側の子も笑ってはしゃいでいるため、教員の方も「遊んでいるんだ」と思ってしまいがちです。“いじられキャラ”が、たとえいじめの延長線上にあるものであったとしても、周囲はおろか、本人でさえ気付かないのです。
実はよくある話
こうした昨今のいじめ事情は、ある雑誌の取材を通じて知ったことでした。でも、実は同じような話ーー「いじめなのか違うのか判断が付かない関係の対応に困っている」ーーそんな話は、日常的な相談や講座の講師を務める中で何度も聞いたことがありました。
たとえば、東京都の児童館職員は「みんなで遊んだ遊び道具の片付けをいつも1人の子に押しつけるが、押しつけられた子も嫌がる素振りも見せず、黙々と片付けている」と語っていました。
また、福島県の学童保育では「グループ内で一目置かれた存在の子がいて、その子の気分次第でだれかを無視したり、小間使いのように使ったりしている。けしていい関係には見えないのに、されている子もグループから離れようとしない」との話を聞きました。
しかし、恥ずかしながら私も、そのいじめ取材をするまでは、「こうした人間関係がいじめの延長線上にあるものでは?」とは思い至りませんでした。
スクールカースト
そんな子ども間に見られる上下関係。たとえば上司と部下のように決定づけられてはいないけれども、クラスメイトの間に存在する序列・ランク付け。そのことを教育研究者らの間で「スクールカースト」と呼びます。
『教室内(スクール)カースト』(鈴木翔著・光文社新書)や、ドラマ『35歳の女子高生』(日本テレビ)で話題になりました。
同書によると、小学校時には「個人間」の地位の差だったものが、中学・高校時になると「グループ間」による地位の差に変化するとのこと。その関わりは空気を読んで行われ、クラスに笑いが起きるもので、上位のグループにはさまざまな特権が与えられるだけでなく、それを行使する義務があるなどの特徴があり、そして、子どもたちはそれをいじめとは認識していないのだそうです(141~142ページ)。(続く…)
Posted by 木附千晶
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