いじめ防止対策推進法は子どもを救う?(1/9)

2019年5月29日

6月21日に、いじめ防止対策推進法が成立しました。

昨年の大津いじめ自殺事件以来、再び「いじめ」の問題が大きく取り上げられるようになり、ネットや携帯電話の普及などによって子どもたちの間でいじめ問題が深刻化するなかでの成立です。

「再び」と書いたのは、注目を浴びるいじめ事件が起こるたびに、「いじめはいけない」という何の効果もないキャンペーンが毎回、毎回、繰り広げられてきたからです。そのことに関して、詳しくは「歴史は心的外傷を繰り返し忘れてきた」の回を参照してください。

いじめ防止推進法の中身

今回成立したいじめ防止対策推進法(推進法)とはどんな法律なのでしょうか。今までのいじめ防止キャンペーンとは違い、本当に実体的な効果を上げられるものなのでしょうか。まずはその中身を確認してみたいと思います。

ちょっと堅い話で退屈かも知れませんが、少しおつきあいください。

まずこの法律は
①「児童等は、いじめを行ってはならない」
といじめの禁止を宣言しています。

そして、
②国・自治体・学校等は、「いじめ防止基本方針」を定め、いじめの防止等のための施策を策定・実施し、
③保護者は、子どもへの規範意識の指導や学校などの行う措置への協力に努めるものとして、
④学校は複数の教員や心理・福祉の専門家らによるいじめ防止等のための組織を常設し、
⑤道徳教育や体験学習を充実し、早期発見のための措置などを講じなければならないこと。
さらに
⑥いじめがあった場合には、事実の確認、被害者側への支援、加害者側への指導・助言、警察との連携や通報などを行う
とされています。

また
⑦加害児童に対する懲戒や出席停止を適切に行い、
⑧命に関わるような重大事態については、教育委員会などが調査を実施し、結果を被害者側に開示し、調査が不十分な場合には、自治体の長が第三者機関などを設けて再調査できるとする
などの特徴が見て取れます。

自民党の意見をほぼ踏襲

推進法には、与党以外の政党の提案も組み込まれたとのことですが、こうして内容を見てみると、昨年末に自民党が出した「重点政策2012」や今年1月に安倍内閣が設置した教育再生実行会議の意見がほぼ踏襲されているようです。

たとえば、
①道徳教育の強化、
②いじめっ子への懲戒や出席停止、
③警察との連携や通報を「ためらいなくせよ」
と言っていることなど、もともと自民党が主張してきた内容がそのまま反映されているように感じます。(続く…

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Posted by 木附千晶