生い立ちと人格(4/5)

2019年5月29日

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こう書いてくると、では①「こうした所業によってヒトラーは、何を得ることができた(得ようとした)のか」、②「なぜ多くの国民が、ヒトラーにあれほど熱狂したのか」が気になってくるところです。

でも、残念ですが今回はそこには触れず、先へ進みたいと思います。①に関してはさらに心理学的な考察が、②については心理学的考察だけでなく、当時の時代背景や人々をとりまく環境などについての説明が必要になってきますので、説明にはかなりの紙幅が必要になります。

また機会があれば、ぜひ書きたいと思いますが、ご興味のある方はミラー氏の著書『魂の殺人 親は子どもに何をしたか』と『子ども時代の扉をひらく 七つの物語』(いずれも新曜社)をお読みいただければと思います。

選挙との関連で

ここでは、今回の衆議院議員選挙との関連で気になった部分を後者の本から一カ所だけ、以下に引用させていただきます。

「ヒトラーが一千年王国を約束した時も、国民の側は、自分たちの愛する、そして自分たちを愛していると称する総統のために、間も無く戦場に送られ、死に追いやられることになろうとは夢にも考えていないのです。しかも、自分たちがそのような目にあわされるのは、総統個人の生いたちのためであるなどとは、まったく分かっていません。国民は総統に協力し、何も考えません。つまり、考えることは総統にまかせているわけです。まるで、将来だとか計画などということは全然わからず、単純に、父親が自分にいいように考えてやってくれると信じている幼い子どものように。子どもは父親をそれほどまでに信頼しているのです。たとえ、仕事から戻ってくると、子どもたちを怒鳴りつけ、手を振り上げて折檻するような父親であっても。父親としては、子どもたちのためだけを思ってやっているのだというのですから」(226ページ)

重なる選挙時の様子

甘い言葉をささやく政党が出て来ると、その中身を吟味することもなく投票し、よい結果が出ないと「期待はずれ」「裏切られた」と言って支持を取り下げる人々。「原発はいらない!」「福島を忘れない!」と言いながらも原発を推進する政党に投票する人々。「強い日本を!」と叫ぶ安倍晋三氏や、「強いリーダーシップが必要!」と発言する橋下徹氏の応援演説に駆けつけ、陶酔したように拍手を送る人々。

さきほど引用したミラー氏の文章の向こうに、今回の衆議院議員選挙で目にしたこうした人々の姿が見える気がするのは私だけなのでしょうか。(続く…

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Posted by 木附千晶