生い立ちと人格(5/5)

2019年5月29日

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「ヒトラーが台頭した頃のドイツと今の日本を比べるのは極端だ」とか「今さら世界規模の大戦争なんてあり得ない」などと、笑う人もいるでしょう。

私ももちろん、心からそうあって欲しいと願っています。そして、確かに“第二次世界大戦のような”大規模な戦争など起こらないだろうとも思っています。たとえ安倍首相が「憲法を改正する」とか「国防軍をつくる」と言っていも・・・。

経済大戦争時代

でも、少し心配なのです。身体的暴力だけが虐待ではないのと同じように、「武器を手に人を殺すこと」だけが戦争だとは思えないからです。

以前『戦争がなくても平和じゃない(2)』で書いたように、日本は13年連続で年間の自殺者数が3万人を超える国です(今年の統計は3万人を下回ると言われていますが)。つまり、市場の利益を最大限に優先する弱肉強食の新自由主義社会への劇的な転換を果たした、ここ13年間の自殺者数を合わせると約40万人と、第二次世界大戦で亡くなった民間人の半数にもなります。

そして、やはり以前に紹介した作家・雨宮処凜さんの『排除の空気に唾を吐け』(講談社現代新書/38・39ページ)には、全自殺者の58%が無職であると記されていました(『「がんばらなくてもいい!」・・・そんな新しい社会へ(6)』)。

こうした社会で激烈な国際経済競争を勝ち残るための闘いが日々、繰り広げられている今は、橋下氏の大好きな競争の舞台で力を発揮し、安倍氏の言うような強い日本づくりに貢献できないような人は、職を失い、尊厳を失い、人間関係や生きる希望をも失って、死へと追い込まれていきます。
まさに「世界的な経済大戦争時代」です。

そんな戦争下に生きる私たちは、多くの人間を不幸にする戦争に歯止めをかけるべく、国を率いる政治家がどんな人格や考えを持つ人物であるかを知るため、その生い立ちを知る必要があると思います。

断片的な情報を見ると

残念ながら今、私たちの手元に安倍氏や橋下氏の生い立ちをはっきりと読み解けるほどの情報はありません。しかし、いくつかの断片を拾い集めると、おぼろげながら見えてくることもあります。

たとえば橋下氏は、厳しいしつけや体罰に肯定的で、テレビ番組で、いじめ行為に加担していた自分の子を50分近くも投げ続けたことを告白し、「口で言って解らない年齢の子供には、痛み(体罰)をもって反省させることが重要」と発言していました(ウィキペディアの「時事問題についての見解・発言」)。

また、安倍氏は、著書『美しい国へ』で、父・晋太郎氏に「明日からオレの秘書官になれ」と突然命令され、「充実したサラリーマン生活をもうしばらく続けたい」と思いながら、父の意向に従ったという28歳時の話を書いています(32ページ)。おとなになってからでさえ、こんな状態なのであれば、子ども時代の親子関係がどんなふうであったかは推して図ることができるのではないでしょうか。

さらに安倍氏は、「秘書になるまで、親子の会話は、かぞえるほどしかなかった」(同書33ページ)とも、「欲望がぶつかり合うジャングルの様な人間社会を平和で安定したものにするには、絶対権力を持つ怪物、リウ゛ァイアサンが必要」(同書116~120ページ)とも、書いています。

どれも、「やはり『絶対王政』の家族構造で育ったのではないか」と思えるエピソードです。

取り越し苦労を願って

こうした危惧が取り越し苦労であることを願いつつ、今年は筆を置きたいと思います。ずっとお読みくださったみなさま、本年も本当にありがとうございました。

来年も、すべての生ある者が幸せに生きていける原点を求め、仕事を続けていたいと思っています。
どうぞ良いお年をお迎えください。

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Posted by 木附千晶