生い立ちと人格(2/5)
『週刊朝日』で橋下氏の連載をスタートさせた動機について、執筆者である佐野眞一氏は次のように述べています。
「橋下氏という人物を看過していたら、大変なことになる。あたかも第二次大戦前夜のようなきな臭さを社会に感じた」(『東京新聞』11月28日「こちら特報部」)
佐野氏は同記事中で、橋下氏の振る舞いに1930年代のドイツを想起したと話し、「ワイマール憲法下で小党が乱立し、閉塞状態が続く。そこにヒトラーが登場する。彼は聖職者や教師、哲学者らを“いい思いをしている連中”とやり玉に挙げ、求心力を高めた。その手法は現在の橋下と似ている」とも語っています(【こちら特報部】「タブー越えてでも書かなければ 「橋下氏連載」佐野眞一氏に聞く」2012/11/ )。
ヒトラーの生い立ちとは
では、ヒトラーはどんな人物だったのでしょうか。どんなおとなに囲まれ、どのような環境下で、どんな子ども時代を過ごした人だったのでしょうか。
あれほど残虐な方法で多くの人々を死に至らしめたヒトラーの生い立ちと、彼の人生、彼の行いはどんなふうにリンクしていたのでしょうか。
私がそれを知ったのは、スイス在住の心理学者で哲学者でもあり、精神分析家としても活躍したアリス・ミラー氏の名著『魂の殺人 親は子どもに何をしたか』(新曜社)を読んだときでした。
ミラー氏は、子どもへのさまざまな暴力(肉体的なものだけでなく精神的なものやネグレクトなどを含む)は、子どもの中に憎しみを育て、他者への暴力となって現れることをヒトラーと彼を取り巻く人々を中心に描きました。
ミラー氏の功績や数々の著作等を知りたい方は『ウィキペディア』等を参考にしていただくとして、ここでは先に進みたいと思います。
絶対王政の典型だったヒトラー家
ミラー氏は同書の中で、ヒトラー家の雰囲気、彼の家庭の構造を一口で言えば「絶対王政の典型」とし、その家庭では「自分が受けた辱めを少なくとも部分的に、自分より弱い者を使って自ら慰めることができた」と記しています(191ページ)。
こうした家の中で子ども・・・つまり幼き日のヒトラーは「権利なき者」として、暴力にさらされ、辱められ、さらにはそのことを「自分のせい」と思い込まされて育ったのです。(続く…)