子どもが危ない(4/6)
過剰な「家の外」での安全対策の裏には、国際競争時代に向けた社会への転換に異論を唱える者を排除しようと目論む国と、セキュリティ産業の活性化を図りたい企業との一致した思惑があります。
このような安全対策は「テロとの戦い」などという名で呼ばれることもあり、9.11以降、全世界に広がり、私たちの日常に少しずつ浸透してきています。
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東京メトロ霞ヶ関駅では改札口を通る人全員を撮影して顔認識データと照合する実験が始まり、パスポートは顔認証データが登録されたICパスポートになりました。
世界最小ICチップの試作に成功した日立製作所とセコム、積水ハウスが共同開発した住宅地には、24時間、常駐の警備員がパトロールしています。この住宅地への入り口や公園には監視カメラが設置され、インターネット環境を整えれば自宅にいながら子どもの様子をモニターから見ることができます。また東京都世田谷区では警察の呼びかけで周辺道路まで監視できるカメラを設置する住宅も増えています。
監視カメラの売り上げは10年前の3倍にのぼる2000億円を超えるほどの人気ぶり(05年現在)。静脈や指紋などで本人確認を行うバイオメトリクス商品市場は5年後には4000億円に達する見込みと言われています。
安全マップをつくることで地域に「危険な場所」が生まれ、不審者情報を流すことで怪しそうな人物が目につくようになります。高い塀で囲われた家の中は、風通しが悪くなり外とのつながりも絶たれます。監視カメラが設置されれば、だれかがだれかを見張ることになり、人々の心には疑心暗鬼が生じます。(続く…)