子どもが危ない(1/6)
「子どもが危ない」ーーそんな不安が日本社会に取り憑いています。
8月に内閣府が発表した「子どもの防犯に関する特別世論調査」によると、「子どもの犯罪被害の不安」が「ある」との回答はなんと74%です。
けれども、この不安には実態がありません。不安を感じる理由も「テレビや新聞で、子どもが巻き込まれる事件がよく取り上げられるから」が85.9%とダントツ。「近所に子どもが巻き込まれた事件が発生したから」は12.1%に過ぎません。
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つまり多くの人は「実際に事件は起きていないのに、子どもが巻き込まれる事件が繰り返し報道されるから」不安を感じているわけです。
事実、子どもが被害に遭う事件は増えていません。警察の犯罪統計によると、殺害された小学生数は76年が100人、82年が79人、04年が26人と減少。子どもが減っていることを考慮しても30年間で4分の1、子どもの減少を考慮した人口比でも半分以下まで減っています。
登下校中の子どもが殺害された広島県広島市や栃木県今市市での事件(05年)のショックから、「危ない」との認識が広まっている登下校中においても、殺害された小学生数は92年から06年9月現在までで、わずか11人。1年間にひとりにも満たない数です(06年1月7日付『読売新聞』夕刊のデータに秋田小学生殺人事件の被害者数を加算)。
奈良女児誘拐事件(04年11月)をきっかけに騒がれた幼女を対象とした性犯罪の認知件数も03年をピークに減少しています。なかでも「わいせつ目的略取誘拐」の減りが顕著で、06年度は前年比マイナス34.9%の15件となっています(『平成17年の犯罪情勢』)。(続く…)