秋葉原殺傷事件の死刑執行(3)
親殺し、とくに母親殺しの大事さを説いたのは分析心理学を創設したユングでした。
ユングが言う「母なる存在」とは、二つの面を持っています。ひとつは、「産み・育て・抱擁し慈しむ母」。もうひとつは、「子を呑み込み、抱きしめて殺す(圧死させる)母」です。
母親は、子どもを愛し、自らを捧げて、その成長を助けます。その一方で、子どもを自分の所有物のように感じ、「子にとって良かれ」との思いで、自らの思い通りに育てようとし、過度に干渉・保護し、子どもの力を削いでしまうこともあります。
母親側が、こうした子どものためにならない関わりに気付き、子離れしたり、父親が子どもと母親の関係性を断ち切る役割を果たせればよいですが、うまくいかないこともあります。
そうしたときには、子どもの側がちゃんと「母親を殺せるか」がとくに重要になります。
「母親殺し」とは母親からの自立
ここでいう「母親殺し」とは、もちろん、実際に母親を殺すということではありません。
精神的な意味での母親からの脱却、母親からの自立。つまり、子どもの心理的な成長(母親離れ)です。
抱きしめよう(支配しよう)とする母親の手を振り払い、「こうあって欲しい」という母親幻想から抜け出すこと、と言ってもいいでしょう。
違う生き方も出来たはず
彼らは、もっと違う生き方が出来たのでは無いでしょうか。そうすれば、彼らによって命を絶たれる人たちもいませんでした。
本当の償いとは
残念なことに、加藤死刑囚は、多くを語れないままこの世を去りました。
安倍元首相襲撃事件の容疑者には、ぜひ、彼の思いや人生について、話して欲しいと思います。そして、二度とこんな事件が起きないよう、その引き金や抑止力となるのは何かを私たちに教えて欲しいと思います。
それこそが、本当の意味での償いなのではないでしょうか。