コロナと報道(2)

通学

「実態と離れた不安」について考えていて、2006年に政府が発表した「子どもの防犯に関する特別世論調査」を思い出しました。

 この世論調査では、「子どもの犯罪被害の不安」が「ある」との回答はなんと74%! ものすごく高回答です。ところがその理由というのが、明らかな印象論でした。「テレビや新聞で、子どもが巻き込まれる事件が繰り返し報道されるから」が85.9%だったのです。


事件に遭う子どもは減っているのに

 この調査の前には、2004年に奈良女児誘拐事件で登下校中の女児が殺害された事件がありました。それらが国民に大きなショックを与えたのは明らかです。

 当時、子どもが被害に遭う事件は決して増えてはいませんでした。警察の犯罪統計によると、殺害された小学生数は1976年が100人、1982年が79人、2004年には26人と減り続けていました。少子化を考慮しても、30年間で4分の1に、子どもの減少を考慮した人口比でも半分以下に減っていました。

 これが現実です。それにもかかわらず、“ごくまれに起きたショッキングな事件”が、繰り返し報道されることで、国民の不安が必要以上に高まったというわけです。

「子どもの安全」という名目で

防犯 世論を背景に、子どもの安全対策として国は湯水のように予算を使いました。

 今では普通の光景になりましたが、地域住民や保護者が子どもの登下校に付いて歩く安全ボランティアや、警察官OBによるスクールガード・リーダーなども拡充され、子どもが、子どもだけで、道草をくったり、気まぐれに遊んだり、自分の世界に浸ったりすることが難しくなりました。

 この頃から、学校と警察の親密性がぐんと増したように感じます。警察官の立ち寄りやガードマン配置に乗り出す学校が増え、非行防止や健全育成を謳った「学校・警察連絡制度」も充実しました。それまで「教育に警察(処罰)はなじまない」と言っていた先生たちも、世論に押され、だまり込みました。

 子どもにGPS付きの携帯電話や防犯ブザーを持たせることも一般的になり、「知らない人が声をかけてきたら逃げなさい」と、子どもに「人間は本来信用できない」というメッセージを伝えることが普通になりました。

 今振り返っても、こうした社会・おとなの対応が子どもの成長・発達に有益だと、私にはまったく思えません。

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