仕組まれた自由のなかで(1)

2019年5月29日

 かつて読んだ小説だったのか、民俗学的な本だったのか、はたまた映画だったのか・・・。具体的な記憶は定かではないのですが、「日頃は隠している、もしくは隠したいと思っている本性を解放する方法は主に二通りある」という話をどこかで耳にしたことがあります。

 その代表例のひとつとして挙げられていたのは、リオのカーニバルでした。リオのカーニバルのなかでも有名なサンバは、露出の高い派手な衣装に身を包み、踊ります。それは日頃は、隠し持っている「もうひとりの自分」を心ゆくまで解放し、放出することにつながるという話でした。

自分を隠し、自分を解放

 そしてもうひとつは、ヴェネツィアのカーニバルです。自分をさらけ出すことで、「もうひとりの自分」を解放するリオのカーニバルに対して、こちらは仮面を付け、自分を隠すことで「もうひとりの自分」を解放します。

 その起源は、中世後期のヨーロッパ宮廷において行われた、寓話的で凝った衣裳による壮麗な行列や、婚礼を祝う誇らしげな行進や、その他宮廷生活における派手な催しや余興で、代表的なものが仮面舞踏会と呼ばれるものだそうです(ウィキペディア)。

 その後、仮面舞踏会はヨーロッパ各地で大流行し、「倫理・道徳を失わせる」「風紀を乱す」などの理由で反対する人や、禁止する統治者がいたほどということですから、貴族を中心に多くの人が仮面舞踏会に興じたということなのでしょう。

日本のハロウィーン

ハロウィン

 ハロウィーンが近づき、オレンジのカボチャや黒と紫のお化けなどが目に付くようになると、なぜか私は必ずこの話を思い出します。

 若者を中心にハロウィーンを楽しむ人が増え、大胆な仮装やびっくりする衣装に身を包み、風貌がよく分からない人を目にすることが増えたせいなのかもしれません。

 本来のハロウィーンは、古代ケルトを起源とするお祭で、秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事だったそうですが、今ではカボチャをくりぬいてジャック・オー・ランタンをつくって飾ったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して近くの家々でお菓子をもらったりする行事になりました。
 
 さらに近年の日本では、渋谷を中心に若者が仮装をして夜の街で遊ぶというイメージがすっかり定着しています。

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Posted by 木附千晶