『希望の革命』(6/9)

2019年5月29日

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フロムは言います。

「現在のシステムの中で働いているすべての人間の努力や思考を導く原理はふたつあり、システムはその線にそって動いてゆく。

第一の原理は、何かをすることが技術的に可能であるから、それを行わなければならないという原理である。核兵器をつくることが可能なら、たとえ私たち皆が破滅することになっても、それは作られなければならない。月や惑星に旅行することが可能なら、たとえ地上の多くの必要を満たすことを犠牲にしてでも、それはなされなければならない。

この原理は、人間主義(ヒューマニズム)の伝統が育ててきたすべての価値の否定を意味する。この伝統においては、何かをしなければならないのは、それが人間にとって、また人間の成長、喜び、理性にとって必要だからであり、またそれが美であり、善であり、あるいは真であるからであった。

何かが技術的に可能だからしなければならないという原理がいったん受け入れられると、他のすべての価値は王位を奪われ、技術的発展が倫理の基礎になる」
(『希望の革命61ページ』)

フロムのことばを繰り返しながら

フロムのこの言葉を繰り返しながら、ひとたび事故が起これば、その周辺で暮らすあらゆる生命を脅かすことになっても、原発の輸出にためらいを感じ無い人たち。また、つい最近の、情報収集衛星の打ち上げ成功を「成功率95%の世界最高水準の技術力を示した」と喜び、沸くニュースを読むと、その類似性よく見えます(情報収集衛星:H2Aロケット20号機打ち上げ 「世界に技術力示す」/鹿児島

福島第一原発の事故を意識し、さすがに原発輸出ビジネスの継続にはクビをかしげるマスコミもありますが、情報収集衛星打ち上げを疑問視する声は、とんと聞きません。宇宙開発とそのビジネス利用への参入をもてはやすムードの方がずっと高いように思えます。

第二の原理は最大の効率と生産

さらにフロムは、同書(62ページ)で以下のように続けます。

「第二の原理は最大の効率と生産の原理である」と。そして、効率と生産の原理を挙げるためには、「人間は個人性を奪われ、自分自身の中よりもむしろ団体の中に自己の同一性を見いだすように、教えられなければならなくなる」と。(続く…

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Posted by 木附千晶