児童相談所は子どもを守る最後の砦か(3/8)
今から数年前に、社会的養護の現実を取材したことがあります。
そのとき分かったのは、ひとりの児童相談所職員(児相)が抱えるケースの多さです。100件を超えていることもざらで、多いと130ものケースを担当していました。
そのほとんどは、危険な虐待が疑われるケースです。法律上は、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じるのが児相の役目ですが、実際には、「生きるか、死ぬか」のようなケースが優先され、それ以外のケースは後回し、もしくは手つかずの状態になってしまいます。
「だからしょうがない」とは言いませんが、その大変さは察してあまりあるものがあります。
職員の専門性や力量の問題
ひとり一人の児相職員の専門性や力量の問題もあります。
自治体によっては、大学等で社会福祉や心理などを学んだ専門知識を持った者を職員として採用しているところもありますが、まったくはたけ違いの部署から児相へと、平気で異動させる自治体もあります。
たとえば、つい先日まで水道だの土木だの戸籍だのを扱っていた職員が、急に児相へと配置され、まったく知らない子どもの福祉に携わるのです。うまく対応できるはずがありません。
通り一遍の研修をわずかにやっただけで、いったいどれだけの専門性が身につくというのでしょうか。
頭で理解するだけではダメ
でも、大学等で福祉や心理を学んでいれば「力量のある専門家」というわけではありません。
おとなから見れば問題行動としか取れないある子どもの言動でも、実際には子どもがうまく言語化できないニーズの訴えであることがよくあります。
こうしたニーズをうまくくみ取るためには、職員の側に「この子はいったい、この問題行動を通して何を伝えたいのだろう」と考え、寄り添おうとする姿勢が必要です。
ところが「問題行動は押さえ込むべき」とか「子どもはおとなの指導に従うべき」などと考えてしまう職員も少なくはないようです。(続く…)