「子どもの貧困」の何が問題か(4/7)
私たちの社会はずっと長い間、「経済的に豊になれば幸せになれるはずだ」と考えてきました。そして、「経済的に豊なのに問題を起こしたり、意欲を持って何かに取り組んだりできないのは本人が甘えているからだ」としてきました。
実は、とても残念なことですがいまだにそのように考えている人が知識人とか、学識経験者と呼ばれる方の中にも少なくありません。
最もよい例が、06年12月の「改正」教育基本法につながる今の教育政策路線を決定づけた『教育改革民会議』の第一分科会に提出した曽野綾子氏のレポートです。
日本は「夢のお国」?
とても長いレポートですが興味のある方は前文を読んでいただきたいと思います。ここではその一部を引用させていただきましょう。
そこで曽野氏は「教育を骨抜きにしたのは、皮肉にも戦後日本の幸運と政治の成功にありました」として、日本がいかに世界的に見て「夢のお国」であるか事実を次のように書いています。
1) 清潔な水が飲める。
2) 餓死するような人も、乞食も、行き倒れも(例外的にしか)いない。つまり社会保障の制度がある。
3) 医療は誰にでも比較的すみやかに受けられる。
4) 弱者の悪口は言えないが、強者の悪口は言える。
5) ほとんどの人が雨の漏らない、電気、水道、暖房、浴室、炊事場などが屋内にある家に住み、テレビや電話などを使える。
6) 行きたいところに行くことができ、親の出身が何であろうと、子供は自分の才能次第で、いかなる 職や地位に就くこともできる。
7) 誰もが税金を納めている。
8) すべての不正な人は、(地位や財力に関係なく)罰される。
9) 誰もが教育を受けられる。
10) 条件をやかましく言わなければ、働くところがある。
11) 血を流すような内乱や部族の抗争がない。
そして「子供たちは、飢えも不潔も、貧困も運命に放置されることも、決定的な暑さも寒さも、知らなくなりました」と述べています。
上に並べた11コの項目にも反論したいところはたくさんありますが、ここではやめておいて次に進みましょう。
今の体制に感謝を
さらに第一分科会での議論を元に奉仕活動や道徳教育の必要性を主張した「日本人へ」では、曽野氏はこう書いています。
「誰があなた達に、炊き立てのご飯を食べられるようにしてくれたか。誰があなた達に冷えたビールを飲める体制を作ってくれたか。そして何よりも、誰が安らかな眠りや、週末の旅行を可能なものにしてくれたか。私たちは誰もが、そのことに感謝を忘れないことだ」(続く…)