児童相談所は子どもを守る最後の砦か(2/8)

2019年5月29日

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虐待は増えているのか、そうでないのか。実際はどうなのでしょう。
興味深い話があります。

虐待を受けたために、養育者との間に健全な絆(愛着関係)を築けなかった子どもや、親を失って施設などで暮らす子どもたちの調査・研究から知られるようになった愛着障害という診断名があります。

子どもは、養育者との間に愛着関係を結ぶことで、養育者を安全基地とし、探索行動をし、認知を広げ、人との良い関係も築けるようになります。ごく簡単に言うと、愛着障害とは、それがそれがうまくできない、障害された状態を指します。

不安定型愛着は三分の一にのぼる

ところが、実の親に育てられた場合も、かなり高い率で愛着の問題が認められることがわかってきました。

『シック・マザー 心を病んだ母親とその子どもたち』(岡田尊司著・筑摩選書)によると、なんと安定型の愛着を示すのは三分の二に過ぎず、残りの三分の一の子どもが不安定型の愛着を示すというのです(48ページ)。

さらに同書では、先天的に不安定型愛着になりやすい気質の子どもが存在するのではないかという仮説のもとに一卵性双生児と二卵性双生児で、二人ともが不安定型愛着である割合を比べた調査も紹介し、「不安定型愛着には、もともと子どもが持っているものよりも、環境要因の関与が大きい」という結論も載せています。

つまり、先天的なものではなく、養育者の不適切なかかわりが大きく影響しているということです。

こうした調査研究や、私自身が臨床や取材の場でお会いする子どもたちを見ていると、「虐待や不適切な養育によって、きちんとした愛着関係を結べない子どもがたくさんいる」ということ。そして、そうした子どもたちは「少なくとも減ってはいない」という印象を受けざるをえません。

ストレス社会は虐待を増加させる

それも仕方がありません。ストレスの多い社会になれば、虐待の危険性が上がることは、今までの虐待に関する心理学的な調査・研究でも指摘されています。
だれもが否が応でも競争のレールに乗せられ、常にその能力に応じて評価、序列化される社会で、福祉は後退し、自分で自分の身を守らねばならない状況がどんどんひどくなっています。

経済的には豊かであっても、生き残りをかけて常に走り続けなければならない世の中で、親のストレスはどれほど大きいかは想像に難くないでしょう。

こうした子どもにとって危機的な状況があるなか、重要な役割を果たすのが、児童相談所です。

児童相談所は、子どもの命と成長・発達を守る最後の砦とも呼ぶべき場所です。しかし、前回のブログに紹介した事件のように、どうもうまく機能できていない現実があります。

その大きな原因の一つは、人手不足です。(続く…

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