さとり世代(5/10)

2019年5月29日

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確かに、怒りや悲しみなどの強い感情は私たちを圧倒し、打ちのめします。けして幸福感を与えてくれる感情ではないので、その感情を持ち続けるのはとても大変なことです。

そのうえ、このブログの「感情を失った時代(7)」などで書いたように、あるシチュエーションの中で当然、抱くであろう「リアルな感情」の存在が許されない現実もあります。

私たちの社会は、べつに特定の宗教に入信などしていなくても、現実社会に適応するべくーーとくに90年代に入ってからーー極力、心を動かさないよう、「感情的になることはよくないことだ」と、子どもたちに教えてきました。

BENNIE Kの『モノクローム』

90年代を生きた子どもたちの気持ちをとてもよく現しているヒット曲があります。2008年にBENNIE Kが歌った『モノクローム』です。 当時、動画投稿サイト“泣ける歌”で再生回数が200万回を超えました。

以下は、その歌詞の一部です(全体を知りたい方はこちらをご参考ください)。

All 遠慮せず Name the price あんたの価値一体どんくらい?
Gucci Fendi Louis Vuitton Or CHANEL がなきゃ計れない時代
先進国日本に生まれ 変えれると思った何か歌で?
現実と言う荒波に打たれ 分かったのは『人生勝ち負け』って
やられる前にやれるか? 負け犬なら慣れるか?
All day All night なんで終わんない 時間は 今日も足りない
ただ不安だって痛んで 不満がって誰かをひがんで
ありったけで笑ったって 本当はもう訳わかんないです (Look at your self)
暗い自分は嫌い 友情とかくさいし要らない
自分の価値そんなの知らない 感情はもううざいし要らない

衝撃的だったフレーズ

私は、2010年に国連で自分たちの現状をプレゼンテーションした子どもたちから、この歌の存在を教えてもらいました。「自分の周囲にいる同世代の気持ちを代弁している」と、教えてくれたのです。

この歌の言う、ブランドがなければその人間の価値がはかれないということ。現実の中で人生は勝ち負けであるということ。負け犬には慣れるのかということ。ありったけで笑っていても、もう訳が分からなくて、友情もいらないということ。

そして、「自分の価値そんなの知らない」「感情はもううざいし要らない」というフレーズ・・・。

私たちがつくってきた社会が、ここまで子どもたちを追い込んでいるのだと、本当に衝撃を覚えました。(続く…

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Posted by 木附千晶