いじめ防止対策推進法は子どもを救う?(8/9)
2019年5月29日
これでは、子どもたちがお互いをランク付けし合うようになるのも当たり前です。
「だれかとつながる」のではなく、「だれかを蹴落とす」競争は、人と人とを分断します。子どもが生まれながらに持っているはずの、他者とつながるために必要な「他者の痛みを自分のものと感じる能力」(共感能力)を蝕みます。
だからたとえば、強い立場にいる子は「相手は傷つくかもしれない」と想像をめぐらせたり、自分の利益につながらないことは「なるべく止めよう」と思うようになってしまったりします。
一方、弱い立場にいる子は、下に見られ、理不尽な扱いをされても「それは自分が悪いんだ」と、自己責任の論理を受け入れ、不当なことでも甘んじて受けるようになります。
強者に刃向って序列から外されることは、その世界から抹殺されるよりは、よっぽどいいからです。
「自分は価値ある存在」と思えない
そもそも、いつでも市場価値ではかられ、だれかと比べられ、社会で「価値がある」とされる何かで秀でていないと認めてもらえない昨今。“ありのままの自分”を認められた経験がない子どもが増えています。
勉強ができなくても、立派な意見が言えなくても、おとなが望むようなことができなくても、「それでもあなたが一番大切だよ」「あなたはかけがえのない存在だよ」と言われたことのない子がたくさんいます。
そんな経験や実感がない子どもは、「自分は価値のある存在」などとは思えようはずがありません。だから、どんなに理不尽なことをされても、ひどい扱いを受けても、「仕方が無い」と受け入れるしか無くなってしまいます。(続く…)
Posted by 木附千晶