『希望の革命』(8/9)

2019年5月29日

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そんな社会では、ひたすら個性を殺し、自ら進んで「長いものに巻かれる」ことで生き延びるしかありません。多様性のある価値観も、生き方もできようはずがないのです。
一昔前よりも多様化が進んだものといえば、働き方くらいなものでしょう。しかしそれも、ある労働組合の方は、こんなふうに断じていました。

「よく、派遣や契約、アルバイトなど、正社員だけでなくさまざまな選択ができるよう『働き方が多様化した』と言う人がいますが、それは違う。経営者の、大企業の都合に合わせて『働かされ方が多様化した』だけです」

今や、非正規で働く男性は539万人で労働者全体の19%、女性では1218万人で女性雇用者の54%を締めています(2011年12月9日『朝日新聞』)。日本の従業員約27%がパートタイム労働者になりました(2011年12月15日『東京新聞』)。年収200万円以下の所得者層が1000万人を超え、低所得者(07年調査では114万円)を示す相対的貧困率は16.0%にも達しています。

不安定雇用を強いられる人たちが就いている仕事の多くは、自分らしさや創造性を必要としないマニュアル化した仕事。流れ作業のように仕事を“こなし”、不平不満があってもおとなしく飲み込んで会社の歯車のような働き方を強いられる仕事。自分らしく意見を述べれば、すぐにクビを着られるような仕事。効率性や経済性だけを追求させられる仕事。

つまり、人として働く意欲や意義を持ちにくい非個性的で非人間的な仕事ばかりです。

「マクドナルド化」した世界

このような仕事のあり方、企業のあり方、考え方が、本来は個性や人間性、批判精神を必要とするはずの教育や福祉、医療、法律、ジャーナリズムなど、あらゆる分野に浸透しています。アメリカの社会学者であるジョージ・リッツァが指摘した世界の「マクドナルド化」です(詳しく知りたい方は『マクドナルド化する社会』早稲田大学出版部を参考にしてください)。

確かに経済的な合理性を追求しようとするのであれば、マクドナルド的な手法ほど良いものはありません。しかし、そのために払う甚大なリスクに、私たちはあまりにも無頓着です。

「マクドナルド化」した環境で生きる人間の想像力は低下し、創造性は失われ、その考えは型にはまったものになります。働き手は阻害され、新しいアイディアは浮かばなくなり、安い給料で働かざるを得ない人を大量に生み出し、貧困の連鎖を招きます。フロムが言うとおり(同書、65ページ)、ストレスや緊張は高まり、さまざまな健康上の問題も生じ、社会は健康維持のために大きなコストを払わねばならなくなります。

不平等感や不満、偏った優越感などが犯罪の温床となり、社会は住みにくく、リスクは高まって行きます。(続く…

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