人は、ひとりぼっちでは生きていけない(2/5)
そう、「ただ、そこにいる」ことで、ミーちゃんは商店街の人々に幸せを与えてくれていました。
そして、「人は一人では生きていけない」という大切なことを教えてくれたのです。
小さく、弱く、人に頼らなければ生きていけないミーちゃんに、大きく、強く、“自立して”いるかに見える人間たちが心の豊かさをもらっていたこと。
——それは、私にとって「目からウロコ」の大きな発見でした。
===
人に頼る存在はあってはいけない?
私は日ごろ、NGOの活動などを通して、おとなに世話をしてもらなければ生きられない子どもたちと会います。そして、子どもたちがいろいろな意味でおとなの庇護を必要とする「子どもだから」という、たったそれだけの理由で、軽んじられたり、理不尽な扱いを受けたり、必要以上に身近なおとなを支えるよう強要されることを目の当たりにすることもあります。
また、カウンセリングの場では、「自分は一人では生きていけないダメな人間だ」と、嘆く方にも多くお会いします。
そうした方々は、社会や親の期待に応えられる「きちんと自立した人間」であろうとして、苦しんでいます。
たとえば、アフリカの子どもたちのように餓えて苦しんだこともなく、スモーキーマウンテンでごみ拾いをするような生活を強いられたわけでもないのに、“人並みの生き方”ができなかったり、人に頼らずに生きることができなかったりする自分を責め、自らの情けなさをかみしめています。
「子どもらしい」ことはタブー
90年代後半になり、社会がますます「自己責任の取れる自立した人間」を求めるようになると、そうした傾向はますます強まりました。
たとえばそれまで、人に甘えたり、頼ったりすることが当たり前とされてきた小さな子どもでさえもそうです。長く、子育て支援にかかわっている友人が、こんなふうに言っていました。
「最近の親は、子どもよりも周りの目を気にしている。少しみんなと同じ行動が取れなかったり、乱暴に振舞ったりするだけで引きずるように子どもを連れて帰ってしまう親もいる。その背景には、ちょっと前なら『子どもらしい』と、微笑ましく受け入れられていた言動でさえ、『きちんとしつけができていない』と思われがちな世の中の雰囲気があると思う」(続く…)