「がんばらなくてもいい」・・・そんな新しい社会へ(5/8)

2019年5月29日

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今回の震災以後に限ったことではありませんが、「心のケア」が、まるで「すべての問題を解決できる魔法の手段」であるかのように喧伝されることに、とても違和感を覚えています。

かつて「スクールカウンセラーの配置」が決まったときにも、

「なぜ毎日多くの時間子どもと接する教員を増やすのではなく、月に数回、限られた時間内でしか子どもに関われないカウンセラーを派遣するのか?」

と疑問に思いました。

このブログの2回目で紹介した高校生が言うとおり、ごく普通に考えれば、ほとんどの子どもは「初対面のカウンセラーよりも、よく知っている先生に話を聞いてもらいたい」と思うはずだからです。

減っている正規の教員

実は今、正規の教員は減っています。

たとえば「子どもが笑う大阪」を掲げて当選した橋下徹氏が知事を務める大阪府では、昨年度の小中学校正規教員採用数1215人に対し、非正規教員は2003人です。

2002年度から非正規教員を細切れに任用してきた広島県では、2専門教科の教員を確保できなかったり、105日間にわたって年度途中での代替者が見つからない事態に陥ったことがありました。

教育の低予算化のあおりを受け、もともとは正規教員が病欠したときの穴埋めなどに任用されてきた非正規教員が、ていのいい「コマ」に使われています。
そう、一般企業同様、公教育においても「使い捨て」で「安上がり」の非正規が増えているのです。

生計を立てるのも大変な非正規教員

余談になりますが、非正規教員ともなると生活は大変です。
生計を立てるために複数の学校や塾をかけもちしたり、アルバイトをすることを強いられます。
時給制で、授業時間以外の教材準備、テストの作成・採点などは無給。
採用期間は学校側の都合で左右され、夏休みなどには収入がゼロになるのですから当然です。
中には生活保護を受給している非正規教員もいると聞きました。

それでなくとも正規教員も、人事考課や数値目標で縛られ、他の教員と競争させられ、事務仕事を激増させられていますから、「子どものことなどかまっていられない」状況。
当然、子どもの気持ちを受け止めたり、うまく言葉にできない思いを聴き取ったりする余裕などありません。

教員が子どもの話も聴けない環境をつくっておきながら、「『心のケア』はスクールカウンセラーに」と言うのですから、それが本当に子どものためを考えての施策なのかどうか疑わずにはいられません。

せめて「すべての学校にスクールカウンセラーを常駐させる」とでも言うのであれば、「特別なニーズを必要とする保護者と子どもへの対応」と思うこともできますが、ほど遠い現状があることはみなさんご存じのことでしょう。

これと同じことが、震災後は「『心のケア』の名目で行われているのではないか?」と思ってしまうのは、私の考えすぎなのでしょうか。(続く…

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Posted by 木附千晶