「子どもの貧困」の何が問題か(1/7)
「子どもの貧困」という言葉を目にすることが多くなりました。
新聞やニュース番組などでも、「学費を払うためだけでなく、家計を助けるためにアルバイトをせざるを得ない高校生」や「健康保険が無いため、病院に行かず、保健室に繰り返し訪れる小中学生」などの姿がリアルに報道されています。
子どもが貧困であるということは、つまりその子どもが暮らす家庭(世帯)が貧困ラインにあるということ。
ちなみに、経済協力開発機構(OECD)のデータが採用している日本の貧困ラインは、親子二人世帯では年収195万円以下、親二人子一人世帯では239万円だそうです(『子どもの最貧国・日本 ーー学力・身心・社会におよぶ諸影響』山野良一/光文社新書)。
10月20日に厚生労働省が公表した相対的貧困率によると、今や国民の七人に一人が「貧困状態」で、OECDの最新統計に当てはめると、なんと上から四番目だそう。
しかも、他の国に比べて「貧困層全体に占める働く人の割合」が八割以上と、高くなっているのが特徴です(『東京新聞』2009年10月21日付け)。
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困窮するシングルマザーの家庭
とくに厳しい状況にさらされているのがひとり親家庭。
2005年のOECD調査によると、主要先進国の中で日本のひとり親家庭の貧困率の高さは第1位。OECD全体で見てもトルコに次ぐ2位になっています。
ひとり親家庭の中でも、とりわけ生活が厳しいと言われているのがシングルマザーの家庭です。
国連「子どもの権利委員会」に日本の子どもをめぐる現状を伝えるために「第3回子どもの権利条約 市民・NGO報告書をつくる会」が全国から集めた基礎報告書には、ダブルワーク、トリプルワークで働いて生活を支えざるを得ないシングルマザーの状況が克明に描かれています。
働いても楽にならない国・日本
ちょっと蛇足になりますが、ひとり親家庭について補足をしたいと思います。
前述した山野氏の著書によると、OECD全体の「働くひとり親家庭」と「働いていないひとり親家庭」の貧困率は、前者が20.6%で後者が58%。つまり、OECD諸国では働くことによって貧困から抜け出せる可能性が高くなることが示されています。
一方、日本はどうかというと、まったく逆。冒頭に記した厚生労働省調査と同じ事実が示されています。データからは「日本は働いても暮らしが楽にならない」国であることが読み取れます。(続く…)