本音を言えない子どもたち(2/5)

2021年1月31日

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教室から追放されたいじめっ子はどうなる?

教育再生会議の提言や報告はまったく了解不可能です。その内容は1995年に文部科学省「いじめ対策緊急会議」が出した「当面の方策」や2000年の教育改革国民会議の答申を厳罰化させただけ。「力で押さえつける非行対策」の枠組みを出ていません。

相変わらず「なぜいじめが起こるのか」、「どうしたらいじめられている子が周囲のおとなに真意を打ち明けることができるのか」という視点はまったく入っていないのです。

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もちろん、ひどいいじめの場合には、緊急の対応が必要です。一時的にいじめている子どもといじめられている子どもを引き離すこともあり得るでしょう。
しかし、それが根本的な解決になるでしょうか。見せしめ的な教室からの追放や懲罰的な奉仕活動によって、子どもに規範意識を植え付け、更正させることができると本当に信じているのでしょうか。

懲罰で教え込まれなくても、いじめが「いけないこと」であることくらい、いじめっ子も重々承知です。それでも今、その子どもが生き延びるためには、だれかをいじめることが必要なのです。
虐待する親が、DVの夫が、自分の抱えてきた過去や苦しさ、今、直面している辛さから、その行為を止められないのと同じです。いじめっ子は、いじめという今できる方法を使って、苦しさや辛さ、悲しさを「分かって欲しい」と懸命に訴えているのです。

教室から追放されたいじめっ子の面倒は、いったいだれが見るのでしょうか。いじめっ子の発したSOSはきちんと受け止められるのでしょうか。その子が本当に人生をやり直せるような人間関係を紡ぐためのサポートは用意されているでしょうか。

私にはそうは思えません。
「子どもの安全」を理由に子どもたちの個人情報が警察へと流れ、警察介入の拡大と幼児からの少年院送致も可能にする少年法「改正」案が継続審議され、アメリカから輸入されたゼロ・トレランス(寛容度ゼロの指導)が声高に叫ばれている現実を考えれば、教室から追放された子どもがどのような扱いを受けるのかは想像に難くないからです。(続く…

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Posted by 木附千晶