「社会の問題」としての自殺(3/4)

2019年5月29日

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image060718.jpg 重光さんは何度か復職を試みますが、そのたびにショックを受けることが続きました。

たとえば早い時間に出勤すると、上司が「もう治ったのか」と声をかけてきたことがありました。「早朝覚醒で眠れないんです」と答えると「オレだって忙しくて3時間しか寝ていない」と言われたそうです。
また、半日出勤や責任の少ない仕事などで少しずつ体を慣らしていきたいと告げると、上司は「何もしないでただ席に座っている気か?!」と詰め寄りました。

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仕方なく産業医に半日出勤の許可を依頼すると「半日出勤の許可を出すと総務が嫌がるから上司に相談して欲しい」と言われました。この産業医は「職場を変えて欲しい」と言った重光さんに「上司が替わるのを待て」とも言ったそうです。

そんななかで一向に良くならない体調。重光さんが「これは労災ではないか?」と尋ねると上司は激怒。療養中の自宅に「君が労災申請などしたら、会社が倒産して大勢の従業員が路頭に迷うかもしれない」と脅しまがいの電話をかけてきたとか。
その上司は、休職中の重光さんが事務手続きで会社に行くと、「あ〜、オレも休みたい」と大声を上げたりしたそうです。

欠勤と休職を続けましたが、昨年、重光さんはとうとう解雇されてしまいました。
組合からは「働く意欲があれば出勤できるはずだ」と言われました。労働基準監督署にも出向きましたが、相手が大企業であるためか会社側をかばうばかりで「なるべく労災申請をさせないように」と思っていることがありありの対応だったそうです。

「だれも自分の味方になってくれない」ーーそう思った重光さんは、弁護士を立て争うことを決意しました。
裁判に関する詳しい情報

こうした現実が、自殺対策基本法が施行されれば本当に変わるのでしょうか?
確かに自殺を「社会の問題」としたことは評価に価します。けれども、いったいどんな視点で問題解決をしていくつもりなのでしょう。
たとえばかつて学校のいじめが問題になったとき、政府は専門家と呼ばれる人たちを集め、研究調査を行い、対策にあたるとしました。けれども、それに基づく抜本的な解決策は立てられないままです。今では子どもたちの世界でのいじめは日常化し、「学校でいじめにあった」と聞いても驚く人はいなくなってしまいました。(続く…

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Posted by 木附千晶