「社会の問題」としての自殺(2/4)

2019年5月29日

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image060713.jpg 本来は労働契約によって、労働の質、条件、時間などが定められています。労働者はそれを超えて働く必要はないのです。
ところが、リストラや左遷、出世、冷たい視線や上司の叱責と引き替えに、暗黙のうちに強制が課され、過剰労働に追いやられる現実があります。

重光さんの場合もそうでした。
「これ以上、立ち上げ業務を早めることはできない」
と上司に報告したところ、上司はすべての部課長宛に
「重光がリーダーを務める業務が最重要課題」
というメールを送信。他の部課長からも「しっかりしろ」と怒られたそうです。

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体調を崩し、休んだ重光さんが出社すると、新たに別業務も兼任になっていました。重光さんの体調がさらに悪化したのはそのころからです。睡眠薬と抗うつ剤を必要とするようになったのです。
驚いたことに、そんな状態の重光さんに上司はさらに別の業務も任せます。倒れて寝込んでいると
「明日の会議は出席できるか?」
などと電話をかけてきました。そのときの気持ちを重光さんはこう語ります。
「恐怖と絶望で断る気力もなくなっていました。とにかく『はい』としか返事ができなかったのです」

会社に行くと涙が止まらなくなり、今度は抗不安剤も処方されるようになりました。
長時間残業者に義務づけられている産業医の検診も毎月のように受けていましたが、状況は変わりませんでした。明らかに悪くなっていく体調を訴え続ける重光さんに、産業医はずっと「問題なし」というA判定をつけ続けたのです。

重光さんは外部の医者のアドバイスで療養生活に入ることを余儀なくされました。直後は、起きあがることも食べることもできなかったそうです。(続く…

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Posted by 木附千晶