『生き心地の良い町』(1/9)
前回は、「命を破壊するほどまでに過酷な環境」について書きました。
そのような緊張にみちた環境にいると、生物はだれかの命を奪ったり、自らの生命を絶つというリスクを負いやすくなるのではないか? という疑問があったからです。
今回はまったく逆の環境。つまり、「生き心地のよい環境」について書いてみたいと思います。
全国でも自殺が少ない旧海部町
『東京新聞』(2016年9月25日)の「こちら特報部」に興味深い記事が載っていました。「自殺少ない 徳島県旧海部町を歩く」という記事です。
旧海部町は2006年に海南町、宍喰町と合併して海陽町の一部となった地域です。人口は約2000人で、かつては漁業や林業で賑わったけれど、現在は高齢化が進む、いわゆる「何の変哲もない田舎町」(同紙)。
その旧海部町が、全国でも自殺が少ない地域として知られているというのです。
ちなみに、現在の日本の自殺者数は約2万4000人。いちばん多かった2003年に比べると約1万人減っています。
しかしそれでも、自殺率は先進国の中でも依然として高いままです。
『生き心地の良い町』
和歌山県立医大で講師を務める岡檀(まゆみ)さんが全国3318市区町村の過去30年間(2002年まで)の自殺率を調査したところ、旧海部町は全国で8番目に自殺が少ない地域だった都のこと。
同地域をのぞく、トップ10はすべて離島だったということで、岡さんはより一般的なコミュニティを有する同地域を研究対象に選んだそうです(同紙)。
そして『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』(講談社)を著しました。(続く…)