野田市小学4年生虐待死事件について考える(1)
千葉県野田市で小学4年生が虐待により死亡した事件を受け、政府もいよいよ重い腰を上げました。
3月12日、児童虐待防止に向けた強化策として今国会に提出する児童福祉法などの改正案を示したのです。
改正案では体罰の禁止を明記し、今の民法で認めている親の懲戒権について、「施行後2年をめどに検討を加え、必要な措置を講ずる」としました。
さらに、改正案と合わせて、虐待防止に向けた抜本的強化対策案も示しました。具体的には「児童相談所(児相)と警察の連携強化」を盛り込み、児相への警察職員の出向や警察OBの配置に向けた財政支援の拡充も記しました。
国連も日本の虐待・体罰に懸念
ところで、この2月、国連「子どもの権利委員会」が、子どもの権利条約に基づいて行う日本政府報告書審査後に出される最終所見(統括所見)が採択され、虐待・体罰などの子どもへの暴力について、国連が懸念を示しています。
「家庭および代替的養育の現場における体罰が法律で全面的に禁じられていないこと」「とくに民法よよび児童虐待防止法が適切な懲戒の使用を認めており、かつ体罰の許容性について明確でないこと」(ARCの平野裕二氏訳)の懸念を示しています。
“しつけ”や“指導”容認が虐待の温床
とはいえ、国連の統括所見が、政府に影響を与えたのかどうかは微妙なところです。前回の日本政府報告書審査後の最終所見でも、ほとんど同じ内容が示されていました。
それでも政府は相変わらず、「子どもに何かを教え込むのは良いことであり“しつけ”である」との考えは変えず、「おとなは『知っていて』、子どもは『知らない』のだから、おとなが“指導”するのはあたりまえ」という姿勢を崩しませんでした。
“しつけ”や“指導”を良しとする、日本社会が持つこの考え、姿勢こそが虐待の温床にほかならないと思うのですが、一般的なとらえ方は、どうも違うようです。
“しつけ”容認派が多数
たとえば、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが20歳以上の男女約2万人を対象に行った調査(17年)では、子育て中の親の約7割は体罰の経験があり、おとなの6割が“しつけ”のためとして子どもへの体罰を容認しています(『朝日新聞』18年2月16日)。
また、厚生労働省によると、04年1月~16年3月に虐待死した計653人のうち、81人(12%)の主な虐待理由は「しつけのつもり」で、理由が明らかなケースで2番目に多く、3歳以上では27人(28%)が死亡し理由として最も多かった(『朝日新聞』18年6月27日)ことは、以前も記した通りです。