相模原障害者施設殺傷事件から2年(2)
確かに、ちまたにはバリアフリーの建物が増え、ユニバーサルデザインのものが珍しくなくなり、公共交通機関では障害がある人へのサービスが厚くなりました。
ホテルなどの宿泊施設や行政機関でも、「盲導犬受け入れマーク」を貼ったり、「筆談に応じます」等のお知らせを置くなど、一見すると、日本は障害者に優しい国になったような気もします。
しかし本質的なところは何も変わってはおらず、逆にいくつもの障害者に関する法律がつくられたこの10数年間で、差別感は増したような気がしてならないのです。
クローズアップ現代を見て
そんな障害者差別について深く考えさせられたのは、昨年7月26日に放送されたNHKのクローズアップ現代を見たときでした。
殺傷事件からちょうど1年がたったこの日、NHKは「シリーズ障害者殺傷事件の真実 “ヘイトクライム”新たな衝撃」という番組を放送しました。
番組のテーマは、欧米で増加する人種や民族など、特定のグループへの偏見や差別を起点とするヘイトクライムと、同事件の犯人である元職員の思想の共通を指摘し、「ヘイトクライムは社会を分断する危険性が指摘されている」として差別のない社会をどう実現していくのかを模索するというものでした。
ヘイトクライムが社会を分断する?
この番組を見て、正直、私は困惑しました。私には「ヘイトクライムが社会を分断する」とは思えなかったからです。
私には、社会のメインにいる人たちが「すべてを経済合理性で割り切ろう」とせんがために、社会が分断され、差別が助長され、その結果、ヘイトクライムが日常化しているとしか思えません。
反貧困ネットワーク事務局長で元内閣府参与の湯浅誠さんの著書のタイトルを借用して恐縮ですが、今の社会はちょっと油断すればだれもが困窮者となるような「すべり台社会」です。
そんな社会でうっぷんをかかえながらも、メイン社会の端っこから滑り落ちないようしがみついている人が増えれば、スケープゴートを見つけてうさばらしをしたいと考える人が増えても当然なのではないでしょうか。