新年の挨拶(2)

2019年5月29日

 ・・・まぁ、そうは言っても「歌詞には、夢や希望、頑張りや前向きさを盛り込むのが一般的なのかもしれない」とも思い、またまたネットで調べてみました。するとちゃんと歌謡曲の歌詞を分析する研究をしている研究者の方がおられ、いくつかの論文を見つけました。

 たとえば「流行歌から見る歌詞の年代別変化」(PDFファイル)(大出彩/立命館大学文学部、松本文子/神戸大学自然科学系先端融合研究環、金子貴昭/立命館大学衣笠総合研究機構という論文は「1997年を境にして、年代を追うごとに明るい(ポジティブな)内容の楽曲が増えた」といいます。

厳しい現実があるから夢を追う?

 この論文では、変化の年となった1997年の時代背景も考察しています。①バブル崩壊とともに、それまで1%だった失業率が跳ね上がり、1997年には3.4%になったことや、②家計負担の影響なのか1997年以降共働き世帯が専業主婦世帯を上回って増加を続けていること、③共働き世帯の増加とともに単身世帯も増加して地域のつながりが低下したこと、④1996年から始まった橋本内閣の金融政策によって消費税が3%から5%に上がったことなど、経済の悪化がいくつも記されており、「ポジティブな楽曲が増えた時代」は「経済が大きく下降したネガティブな時代」だったことが分かります。

 また同論文は、毎年漢字能力検定協会発表している「今年の漢字」として1997年に選ばれたのは「倒」だと紹介しています。大手企業の倒産や金融機関の破綻などが相次ぎ、倒産件数が前年度を大きく上回って、負債総額が戦後最悪の年だったとの指摘もありました。

 もしかしたら、「現実が厳しくなったからこそ、夢を追い求める傾向が強くなった」との仮説が立つかもしれません。

平成の歌詞は「夢を見る」が最多

 さらに面白いことに「流行歌の歌詞に多用されるフレーズと、その変遷について
 という論文では、平成に入ってからJ-popと呼ばれるようになった流行歌のフレーズでいちばん多く使われているのは「夢を見る」だそうです。
 
 もし、先の仮説が正しいとしたら、1997年からずっと私たち庶民の懐は寂しくなる一方で、現実は厳しくなり、とても希望を実現できるような状況では無くなったからこそ、人々は「夢を見る」ようになってきたのではないかと言えるのではないでしょうか。

幸せに向かって

 そんなふうに考えると、昨年の紅白のテーマが「夢を歌おう」だったことは、いよいよ意味深長に感じてしまいます。
 どうか今年は現実からほど遠い「夢を見る」のではなく、地に足を付けて、幸せに向かって一歩一歩進んでいける年になりますように。

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへにほんブログ村 メンタルヘルスブログ 心理カウンセラーへにほんブログ村 メンタルヘルスブログ 臨床心理士へにほんブログ村 メンタルヘルスブログ 生きづらさへ

Posted by 木附千晶