『生き心地の良い町』(8/9)
自己効力感の提唱者・バンデューラは、この「自分はできる!」という感覚を高める要素として次のようなものを挙げています。
(1)遂行行動の達成(実際に行動したことの成功体験)
(2)代理的体験(自分が行おうとしている行動をうまく行っている他者の観察)
(3)言語的説得(自己教示や行おうとしている行動を優れた他者から評価されること)
(4)情動的喚起(生理的な反応の変化を体験してみること)
なるほど、なるほど。ですが私にはもうひとつ、いちばん大切なものが足りないように思います。
それは「自己肯定感」です。
「ありのままの自分でいい!」感覚
「自己効力感」が「自分はできる!」ということだとしたら、「自己肯定感」は「ありのままの自分でいい!」と思えることです。
つまり、何か秀でているとか、とくべつな能力や才能があるとか、一角の人物であるとか、そういったことなしに「何者でもない自分にかけがえのない価値がある!」と思える感覚というのでしょうか。
この感覚は、ただ泣くしかできない無力な乳幼児の頃から養われます。
迷惑をかけたたり、おとなの手を煩わせるしかできない乳幼児が、その不安や恐怖、思いや願いを養育者にきちんと受け止めてもらい、ニーズを満たしてもらうことで「自分は愛されている」「自分は大切な存在である」と、自己を肯定的に感じられるようになるのです。
「自分の見方」が人生を左右する
こうした「自分の見方」は、もちろん、後に変化することもあり得ます。たとえば愛してくれた両親との別離や、学校でのいじめ、受験競争における敗北など、せっかく獲得した「自己肯定感」を低める要因が人生には待ち受けています。
その逆もしかりです。乳幼児のときによい養育者に恵まれなかった人も、その後の人生のいずれかで「あなたはそのままで価値がある」という関わりをもらえれば、変わる可能性を秘めています。
しかしそれでも、人生の初期段階で獲得した「自分の見方」は、かなりの確率でその後の人生を左右します。(続く…)