『生き心地の良い町』(7/9)

2019年5月29日

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そんな子どもたちの状況から察するに、今の日本はとても閉塞的で画一的な社会になってしまっているということなのでしょう。

そう考えると、今までにご紹介した海部町の「いろんな人がいた方がよい」や「『病』は市に出せ」という予防因子が、それも自然発生的に成立していることは驚くに値します。

どうしてそんなことができたのでしょうか?

「どうせ自分なんて、と考えない」町民気質

どうも「どうせ自分なんて、と考えない」(自殺予防因子ーその三)という町民気質が重要な気がしてなりません。

著者はこの三つ目の自殺予防因子の根拠のひとつに「『自分のようなものに政府を動かす力はない』と思いますか」というアンケートの調査結果を挙げています(57~58ページ)。
自殺多発地域のA町では、「動かす力はない」という回答が51.2%と半数を上回ったのに対し、海部町ではわずか26.3%だったというのです。

また著者は、「若いときから毎日畑に出て日の出から日の入りまで働き、家庭を支えて子どもを育てて、きちんと税金を納めてきた人」(69ページ)であるA町の老女が、働かない(働けない)ようになった今の自分を“極道もん”と呼び、人目を気にしてディケアに行くことさえ遠慮する様子を見て、「鼻の奥がつんとなった」(68ページ)記す一方、海部町のお年寄りのについて、町の医師とのこんなやりとりを載せています。

「『デイケアに行くのだって、大威張りですよね』。私が言うと、医師はくっくっと笑い、『ああもう、大威張りですよ』と同意した」(70ページ)

「自己効力感」とは

こうした海部町の町民気質について、著者は社会学習理論で有名な心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した「自己効力感」の現れであるとし、「一般の人においては『自己信頼感』や『有能感』という言葉に置き換えた方が理解しやすいかもしれない」(63ページ)と述べています。

ちなみに、「自己効力感」とは「人が何らかの課題に直面した際、こうすればうまくいくはずだという期待(結果期待)に対して、自分はそれが実行できるという期待(効力期待)や自信のこと」(ナビゲート:ビジネス基本用語集)。

かんたんに言うと、「自分はできる!」という感覚というのでしょうか。(続く…

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